povoをeSIMにして海外ローミングで使う場合のメリット・デメリットを解説
auの格安SIMこと「povo2.0」(以下povo)の海外ローミングサービスが2023年夏から始まりました。日本で使うのと同じように必要なデータ量をトップアップすれば海外でも使うことができるのです。国内同様にpovoの海外ローミングはプリペイド式のため、あやまってデータ通信をしてしまい後から高額な課金が来る心配もありません。一方では通話はローミング料金がかかるのでかかってきた電話を受けるのには注意が必要です。そのあたりを理解したうえで使いこなせば海外旅行や出張に便利な存在になるでしょう。
目次
①povoの海外ローミングサービスの概要
povoの海外ローミングサービスは2023年8月9日以降、すべての契約者が利用できます。povoを入れたスマートフォンを海外に持ち出し、ローミングをONにするだけで現地の回線経由で使うことが可能になります。
またpovoアプリの画面には「国内」に加え「海外」のタブが見えます。海外でデータトッピングを行う際などは「海外」タブを使用します。
②海外で通話やSMSを利用するときの注意
povoの海外ローミングサービスは「音声通話とSMS」「データ通信」の2つがあります。それぞれで使い方や料金体系は異なります。なお日本国内でトッピングしたデータは使えません。通話かけ放題に加入していても海外ではすべての通話に料金がかかります。海外での通話、SMS、データはすべて別料金です。
まずは音声通話の使い方と注意点を説明します。最初に頭に入れておきたいのは海外での通話は料金が高額なうえ、着信にも料金がかかるという点です。日本にいるときの感覚で「着信なら無料だろう」と思い込み、日本からの通話を受け続けると高額な料金がかかってしまいます。
povoでの海外ローミングは音声通話とSMSは登録不要で使えます。そのため海外滞在中にも間違い電話や迷惑電話がかかってきてしまう可能性があるのです。「かかってきた電話には出るもの」という気持ちもわかりますが、料金が高額なことを考えるとなるべく着信には出ないようにした方がいいかもしれません。
なお電話の着信を海外で試してみたところ、以下どちらも電話番号が表示されました。電話帳に入っていれば名前も表示されます。かかってきた電話が必要なものかどうか、着版を見ればある程度判断できるでしょう。
・韓国でpovo回線を入れたスマートフォンに、韓国のスマホから着信
では海外で通話を使うとどれくらいかかるのでしょうか?料金詳細はこちらのページに出ています。
https://povo.jp/service/international_roaming/
音声通話の一例ですが、韓国内で発信は50円/分。タイで他の国に発信すると265円/分がかかります。またアメリカでは着信に出ると165円/分です。海外ローミング時の音声通話はよほど緊急の相手ではないかぎり「電話はかけない、出ない」ようにしたほうが無難な理由がわかるでしょうか。以下は主な国の通話料金です。
なおSMSは着信無料、送信100円/通です。海外滞在中に日本から連絡を受けたいときは、なるべくSNSを使ってもらい、それができない場合はSMS、最後の手段として音声通話、と家族などに伝えたほうがいいでしょう。
③海外でデータ通信を利用するときの注意
一方、データ通信の利用は安心できる料金体系になっています。まず海外用のデータトッピングを購入しない限り、スマートフォンがデータ通信を行うことはありません。但し海外データトッピングを買うには一時的に現地のWi-Fiに繋ぐ必要がありますから、ネット環境の全くない場所ではトッピングを購入できない点には注意が必要です。
povoのデータ料金は以下の通り。90以上の国で使える「レギュラートッピング」と、特定の国や地域で使える「エリアトッピング」、さらに160以上の国で使えるワイドトッピングの3種類があります。日本人がよく訪れる韓国やアメリカ、東南アジア諸国のエリアトッピングは割安で、たとえば韓国なら1GB 3日間 690円。週末の弾丸旅行にも便利でしょう。
海外データのトッピングは日本国内のデータトッピング同様、プランを選んでスワイプするだけと簡単です。購入後は選んだプランの欄に利用開始期限(30日後)が表示されます。またWi-Fiをオフにすればすぐにデータ通信が始まり、プランの欄に有効期限が表示されます。
海外データトッピングは日本でも購入できます。日本にいるときは海外データトッピングのデータ量が使われることはありません。しかし海外に到着して現地の電波を拾ったと同時にデータ通信の使用が開始されます。そのため「ソウルについて、明日からデータ通信をしよう」という場合はスマートフォンの電源を明日までで入れないか、オフラインのままにしておく必要があるのです。データ通信だけを遅らせて使うことができないのは唯一の欠点と言えるかもしれません。
それでは実際にどの程度の速度が出るのか、フィリピンのマニラ、香港、ドイツのベルリンで試してみました。
マニラでは下りが20-30Mpbs、上りが10Mbps前後でした。
香港では速度は安定せず、下りは10Mbpsから50Mbps、上りは5Mbpsから20Mbps。
ベルリンでは複数の繁華街でテストしたところ、下りは10Mbps前後、上りは20-40Mbpsでした。
④日本の他キャリアのローミングサービスとの違い
povo同様に低料金で海外ローミングができるサービスとしてahamoと楽天モバイルがあります。povoのメリットは基本料金がかからないことで、いざ急に海外に行くとなったときでも、必要なデータ量をトッピングして使うことができます。
日本でMVNOキャリアを使っている人が週末韓国に行くなんてときも、povoのeSIMを入れておけばすぐに対応できるわけです。一方povoは海外で電波を拾うとデータトッピングの利用も開始されれるため、一時的にデータ通信をOFFにする、といった使い方はできません。ワイドトッピングの30日以外は24時間や3日間などのプランが多いことから、povoは海外に短期で行く人に向いていそうです。
⑤eSIMスマホにはpovoを入れておくのが便利
前述したようにpovoは基本料金がかかりません。そこでeSIM契約にしてeSIM対応のスマートフォンに入れておけば、使いたいときだけすぐにデータトッピングして使うことができます。一般的なnano SIMカードの場合は普段使わないSIMをどこにしまったか忘れてしまったり、紛失してしまう恐れもあります。
povoのように緊急時に役に立つSIMはeSIMにしてこそ使い勝手は高いと言えるでしょうね。もちろん普段日本でpovoを使っている人なら、海外に出るときも普段の感覚でデータトッピングを買うことができるので便利でしょう。自分のスマートフォンがeSIM対応ならば、「とりあえずpovoをeSIM契約して入れておく」のもいいかもしれません。
香港在住の携帯電話研究家。海外(特に中国)のスマートフォンや通信事情に精通。IoT、スマートシティー、MaaS、インダストリアルデザインなど活動の幅は広い。最新機種のみならずジャンク品から百万円のラグジュアリーモデルまであらゆる携帯電話・スマートフォンを購入する収集家でもあり、その数はまもなく1800台に達する。