最新折りたたみスマホの展示やeSIM配布も!MWC上海2023レポート
アジア最大の通信関連イベントであるMWC上海2023が2023年6月28日から30日まで上海で開催されました。最新スマートフォンからeSIM関連の展示まで、見どころは盛りだくさんでした。注目の展示を紹介します。
目次
①新世代の縦折りスマホ、モトローラ 「razr 40 Ultra」と「razr 40」
モトローラが日本でも発売した「razr 40 Ultra」は閉じたままでも使える大型ディスプレイを外側に配置した縦折り式のスマートフォン。モトローラは姉妹機として外部ディスプレイを小型にしてスタイリッシュな外観とした「razr 40」も海外で販売しています。なお「razr」は「レイザー」と読みます。
まずは日本未発売のrazr 40からチェック。外側のディスプレイは1.5インチと小さく、コンパクトに折りたためるスマートフォンであることがわかります。ディスプレイの周りは背面も含めレザー調の仕上げで高級感があります。サムスンの「Galaxy Z Flip4」とよく似たデザインですが、サムスンは「カジュアル」、モトローラは「上品」といった印象でしょうか。
側面から見ると隙間なく閉じることができます。ヒンジ部分にはロゴなども無くすっきりした仕上げが美しい。
もう1つのモデル、razr 40 Ultraは日本でも販売がはじまりました。外のディスプレイが3.6インチと大きく、ここでアプリを動かすこともできます。閉じたままインスタを見るなんてこともできるわけです。またモトローラのスマートフォンは標準で本体を2回振るとカメラが起動しますが、このように閉じたままでもカメラを起動して外ディスプレイでプレビューを見ながら、外側のメインカメラで自撮りもできます。これは便利な機能です。
どちらのモデルも開くと6.9インチの大型ディスプレイが現われます。閉じることなくこのまま普通のスマートフォンとして使ってもいいわけです。razr 40は閉じば上品に、razr 40 Ultraは外ディスプレイが使えるコンパクトスマートフォンに変身するわけですから、どちらのモデルを選ぶか悩んでしまいそうです。
②アナログカメラを思わせるクラシカル風スマホ「nubia Z50 Ultra」
Nubiaは日本でもたまにスマートフォンを出すZTEの子会社で、そのフラッグシップモデルがZ50 Ultraです。紹介するのはまるで皮を張り付けたようなデザインの「Z50 Ultra フォトグラファーエディション」。茶色い皮を張り付けた昔のカメラのようにも見えるデザインです。このレトロ感あふれる外観に、6400万画素を2つ(広角と3.3倍望遠)、5000万画素1つとかなり高性能なカメラを搭載します。
ディスプレイ面を見ると、あるはずのものが見当たりません。iPhone 14 Proユーザーならすぐに気が付くと思いますが、フロントカメラが見えないのです。Z50 Ultraのフロントカメラは「UDC=アンダーディスプレイカメラ」。ディスプレイの下にカメラが埋め込まれており、動画を見たりゲームをプレイするときに視界を遮るものは一切ありません。
チップセットは2023年上半期のハイエンドモデルが採用するSnapdragon 8 Gen 2を搭載しているので動作に不満が出ることはありません。右側面上側(写真では上部左側)にはプログラムキーがあり、カメラやゲームなどお気に入りのアプリをワンタッチで起動できます。
③ChatGPTの回答がメガネで見える「nubia Neo Air スマートグラス」
同じくNubiaから登場したnubia Neo Air Smart Glassは、メガネのレンズ部分に文字や図などを表示できる、スカウターと呼ばれる製品です。スマートウォッチの通知画面をメガネに搭載した、そんなイメージです。見た目はなるべく普通のメガネに見えるようにしており、本体カラーは黒と白の2種類があります。
スマートフォンとBluetoothでワイヤレス接続することで、スマートフォンへの通知や、音声会話の翻訳結果、地図の検索結果のナビゲーション情報(方向や距離)を単色カラーで表示してくれます。そして目新しい機能としてChatGPTにも対応。ChatGPTに対して質問を音声でなげかけると、その回答を文字で表示してくれるのです。仕事中にわからないことやしらべたいことがあったら、もはやスマートフォンやPCは不要。nubia Neo Air スマートグラスに話しかけるだけで答えが表示されます。
スマートグラスは「いかにもIT機器」というデザインのものが大半ですが、nubia Neo Air スマートグラスなら普通のメガネにしか見えません。毎日必要な情報を自然なスタイルで収集できるわけです。
④RoBoHoN(ロボホン)の再来?手のひらサイズのロボット「悟空」
シャープが20万円近い価格で販売していたRoBoHoN(ロボホン)を覚えているでしょうか?かわいいロボット型のスマートフォンで、プロジェクターも内蔵するなかなか高性能なミニロボットでした。Fibocomが展示していた「悟空」はUBTECHが2019年に開発した製品で、LTE通信を内蔵。よく見るとディスプレイがないのでスマートフォンの機能はありませんが、通話機能などは搭載しています。
テンセントグループと共同開発されており、AIによる顔や物体認識機能も搭載。AI監視カメラ機能も搭載します。また関節部分14か所には小型モーターが内蔵されており、音楽に合わせて踊ったり話をしながら身体を動かすといった動作も可能。目の表情は液晶で喜びや悲しみなど複数が表現できます。動きのプログラミングもできるので、学習ロボットとして教育機関向けに展開されたそうです。
⑤eSIMの出展も多数、その場で試せるeSIMも展示
eSIM関連サービスの展示も多く見かけました。コンテナの追跡などIoT機器向けのトラッキングデバイスにグローバルローミング対応のeSIMが使われるケースが増えていますが、一般消費者向けのサービスを展開している企業の展示もありました。
スマートフォンメーカー向けにeSIMソリューションを提供する企業もあり、eSIM内蔵のスマートフォンの試作機も見かけました。物理SIMカードとeSIMに内蔵しており、買ってすぐに内蔵のeSIMでネットアクセスが可能な他、自分の契約しているnano SIMカードを入れても使うことができるとのこと。
前述したIoT機器向けのeSIMの切り替えソリューションのデモなども見られ、普段は知ることのない物流や工場管理などにもeSIMが活用されていることを知ることができます。
レノボは中国でMVNO事業も展開しています。以前は一般消費者向けサービスも展開し提案していましたが、今はノートPCやスマート自動車向けにサービスを展開しており、eSIMを使うことでSIMカードを入れ替えずとも国内や海外キャリアを簡単に切り替えるソリューションを説明していました。
ところでMWC上海が開催された中国では、スマートフォン向けのeSIMはまだサービスが開始されていません。そのため中国で販売されているiPhoneもeSIMは搭載せず、最新のiPhone 14シリーズでも物理SIMカード2枚仕様になっています。その一方ではスマートウォッチへのLTE搭載が進んでおり、それらの製品はeSIM対応になっています。
⑥NTTのeSIMを使ってみた
こちらはMWC上海2023ではなく、1か月前のシンガポールで開催されたCommunicAsia 2023の出展の話です。CommunicAsia 2023にはNTTアドバンステクノロジが出展しており、通信関連の材料などを展示していました。さらには2018年にNTT コミュニケーションズが買収したグローバルSIMサービスを展開するTransatelの「Ubigi」を紹介。Ubigiは190か国以上で使えるeSIMも展開しています。ブースでは体験eSIMを無料配布していたので、ここで紹介します。
このeSIMについては以前の連載記事
「eSIMはどこで買う?海外プリペイドeSIMの購入先」
でも簡単に紹介しましたが、eSIMになったことでQRコードを印刷した紙を配るだけでスマートフォンから手軽に新しい通信サービスを使うことができます。
iPhone 12 miniで体験eSIMを読み込み、香港で使ってみました。接続はLTEで速度は下り100Mbps前後と十分。上りがやや遅いものの、5 – 20Mbpsは出ていました。それにしても展示会で簡単に通信回線を配れるようになったのもeSIMのメリットといえるでしょうね。今後も引き続きeSIMが関係する海外展示会の取材を記事にする予定です。
香港在住の携帯電話研究家。海外(特に中国)のスマートフォンや通信事情に精通。IoT、スマートシティー、MaaS、インダストリアルデザインなど活動の幅は広い。最新機種のみならずジャンク品から百万円のラグジュアリーモデルまであらゆる携帯電話・スマートフォンを購入する収集家でもあり、その数はまもなく1800台に達する。