eSIMがいよいよ本流に? 新iPadはeSIMオンリーに
2024年5月7日にAppleが発表した新型「iPad Pro」と「iPad Air」のWi-Fi + Cellularモデルでは、ついにSIMスロットがなくなり、eSIM専用モデルとなりました。
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いよいよSIMスロットがないiPadが日本で発売に
さる5月7日に発表され、5月15日から販売が開始されたiPad最新モデル「iPad Pro(M4)」と「iPad Air(M2)」は、どちらもWi-Fi+Celluer版がeSIM専用モデルとなりました。iPhoneや従来のiPadにあったnanoSIM(物理SIM)のスロットが廃止され、利用できるSIMはeSIMのみとなりました。
端末をeSIMのみ対応とするには、当然販売する通信キャリアにおけるeSIM提供体制が整っている必要があります。わが国でiPadを販売する各キャリアもすでにeSIMの提供が可能となっていますので、これを機に踏み切ったのでしょう。
また今回モデルチェンジしたiPad Proはとても薄型で、物理的なSIMカードを挿入するスペースを作るのに限界があったかもしれませんし、耐久性を維持するためSIMスロットを廃止したかったという狙いもあったのかもしれません。
じつは米国ではすでに2022年発売のiPhone 14からeSIM専用となっており(米国以外で販売されるiPhoneにはSIMスロットが存在)、eSIMの普及が進めば日本で販売されるモデルもいずれeSIM専用モデルになっていくのだろうと思われていましたが、案外早くeSIMが本流になっていくのかもしれませんね。
海外旅行などにも重宝するeSIM
eSIMのメリットとして、複数のeSIMを保存しておくことが可能です。最大数は筆者も確認できていませんが、iPhoneやiPadは最大で8つほどのeSIMを保存できるとも言われています。
デュアルSIMとして2回線同時に待受け状態にして利用することができるほか、普段使わないeSIMも削除することなく端末に残しておき、必要な時に切り替えて使用するということが可能です。
また海外旅行などで、現地で利用するためのデータ通信プランをeSIMで追加するといった使い方もできるわけです。その際に、普段日本でメインに使用しているeSIMも、削除することなく端末内に留めておくことができるのです。
AppleはこれまでもSIMの変革を試みてきた
そもそもAppleは、SIMの改革を先陣切って取り組んできた端末メーカーともいえます。物理的なSIMカードのうち、最も小型の「nanoSIM」を最初に採用したのもAppleでした。2012年に販売されたiPhone 5がnanoSIMの最初のモデルとなりました。現在ではほとんどのスマホがnanoSIMを採用しています。
そしてeSIMの概念もAppleの試みから始まったと言えそうです。Appleは2014年にApple SIMという独自のサービスを通じて「遠隔ダウンロード型のSIM」を先行して実現させました。eSIM規格に正式対応した最初の端末は2016年登場のサムスンGear S2でしたが、同年にAppleが発売した9.7インチiPad Proから独自の内蔵SIMに対応させ、以後はeSIM規格に対応したモデルを販売してきています。
Celluer版のiPadはまさにAppleのSIM変革の旗艦といえそうですね。
名桜大学人間健康学部健康情報学科教授。’90年代から携帯電話端末のレビューやサービスの解説を行ってきた。携帯電話情報サイトの編集長などを務めた後、2009年に大学教員に転身。以後スマートフォンの社会での活用などを研究テーマとして活躍。現在は医療・ヘルスケア分野へのデジタルデバイスの応用を中心に研究に従事。携帯電話コレクターとしても知られる。