万が一の通信障害に備えて副回線をeSIMで追加する
2023年春以降、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの各社は「副回線サービス」を開始しています。きっかけは2022年7月に起きたKDDIの大規模な通信障害でした。また新年早々に発生した能登半島地震でも大規模な通信障害が発生しており、改めて副回線の活用が注目されています。
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副回線サービスとは
もはや欠かせない生活インフラとなっているスマホですから、長時間にわたって通信ができないという状況が発生すると社会生活の様々なシーンで多くの支障がでてきます。
このため、通信各社の相互の連携により通信障害や災害などの緊急時に使える代替手段として「副回線サービス」の提供が始まりました。
万が一、自社の通信において障害が発生した場合に、他社の通信ネットワークで代替の通信を利用することで障害を回避してもらおうというものです。
主回線がNTTドコモ(ahamoも含む)のユーザーはKDDI、主回線がKDDI(au/UQモバイル)のユーザーはソフトバンク、主回線がソフトバンクのユーザーはKDDIのネットワークを利用します。各社とも429円/月のサービスとなっており、副回線を利用した場合は音声通話は22円/30秒、データ通信は500MB/月までの通信料が含まれます。
じつは副回線はeSIMを追加するものだった
じつはこの副回線は、通信料金の支払いこそ主回線と一緒に請求されるのですが、仕組みとしては他社のeSIMを追加することで代替回線の利用が可能になるというものです。したがって副回線は電話番号も主回線とは別のものになるのです。
あれれ?! eSIMを追加するというのなら、何も通信キャリアが提供する副回線サービスを利用しなくても、自分の好みのeSIMを追加すればよいではないですか!
はい、そうなんです、各通信キャリアの副回線サービスはいざというときの代替回線としてスマホに追加しておくもので、積極的に利用する回線ではないはずです。そのサービスに429円/月も追加料金がかかるのなら、もっと格安の、自分好みのeSIMを探したほうが良さそうではないですか。
現在販売されている大半のスマホは2回線使える
じつは、現在市販されているスマホの大半は、1台の端末で2回線の通信サービスを利用できるようになっています。2回線目の通信サービスを利用する場合には、物理的なSIMカードを2枚挿入できる機種も一部ありますが、基本的にはeSIMで追加するケースが大半です。
筆者も1端末に2回線を入れて活用しています。メインの回線はソフトバンクのネットワークを利用するワイモバイルで、副回線にはauのネットワークを利用するpovoを入れています。
2回線のSIMが入っている端末では、上図左のスクリーンショットのように、アンテナピクトが2つ並び、主回線、副回線のそれぞれの電波状態を見ることができます。音声通話やデータ通信などを利用する際にどちらの回線を使うかは、設定の中にある「SIMマネージャー」で選択が可能です(Androidの場合)。
おすすめのeSIMを探せ
副回線としての利用を想定するのであれば、主回線とは別のキャリアのネットワークを選択するのが基本となります。主回線と同じネットワークにしてしまったら、通信障害が発生した際に副回線も使えなくなってしまいます。
もしNTTドコモやソフトバンクのネットワークを利用するサービスを主回線に使っているのであれば、おすすめはKDDIのオンライン専用プラン「povo」です。
povoの最大の特徴は、月額0円から利用できるということ。副回線として維持しておくだけなら、維持費が掛からないわけです。そして、いざpovoでデータ通信等利用する際にはpovoアプリから有料のトッピングをセレクトします。
例えば「データ使い放題24時間」は330円で利用可能です。24時間以上通信障害が発生して主回線が使えないというようなことはそうそうありませんから、困ったときに330円でしのげるのです。それ以外にも、「データ通信1GB/30日」(499円)、「データ通信1GB/180日」(630円)などのトッピングがいざというときに役立ちそうです。
一方、KDDIのネットワークを利用する通信サービスを主回線にされている方は、KDDI以外のネットワークを利用する副回線を選ばなければネットワークの代替ができません。万が一の副回線として利用するなら維持費が安いMVNOを選択するのがよさそうです。
筆者の利用経験からは、日本通信の「合理的シンプル290プラン」をおススメします。月額290円の基本使用料で音声通話可能なeSIMを維持することができ、しかもこの月額基本料に1GBのデータ通信が含まれています。音声通話料は30秒11円かかります。「合理的シンプル290プラン」はNTTドコモのネットワークで利用が可能です。
eSIMならば簡単に追加可能
万が一の時に備えて、維持費が安価な副回線をeSIMで追加しておきましょう。通信が使えない状態になってからでは手遅れです。Wi-Fiが利用できる環境であれば主回線が利用できない場合でもeSIMの追加は可能ですが、万が一の通信障害の際にそこにWi-Fiが使える環境があるかどうかは分かりませんからね!
名桜大学人間健康学部健康情報学科教授。’90年代から携帯電話端末のレビューやサービスの解説を行ってきた。携帯電話情報サイトの編集長などを務めた後、2009年に大学教員に転身。以後スマートフォンの社会での活用などを研究テーマとして活躍。現在は医療・ヘルスケア分野へのデジタルデバイスの応用を中心に研究に従事。携帯電話コレクターとしても知られる。