山根康宏のワールドeSIMレポート
2024年5月20日

定価では売ってくれないイタリア・ミラノのeSIM事情

イタリアではスマートフォンを使う際に、プリペイドSIMを利用する人が多くいます。そのため外国人でも現地のSIMカードの入手は容易です。ではeSIMの購入はどうなのでしょうか?今回はイタリア、ミラノに行きeSIM事情を調べてみました。

 

eSIM販売キャリアは少ない

 

イタリアでは4つのキャリアがサービスを提供、また日本でいうところの格安SIM、MVNOキャリアも何社かが展開しています。大手キャリアはTIM、Vodafoneイタリア、Wind Treで、後からIliadが加わった4社が英語しています。ミラノ中央駅や、繁華街にはこのうち先行3社の店舗をよく見かけます。

 

ミラノ中央駅にあるVodafoneイタリアの店舗

筆者はミラノへ着くと、いつもここでプリペイドSIMカードを購入しています。残念ながらVodafoneイタリアは旅行者向けのeSIMは販売していないため、一般的な物理SIMカードのみしか購入できません。いずれ対応されることを期待したいものです。なお代金は41ユーロ(約6800円)。イタリア50GB、ヨーロッパ10GB(スイス以外)、音声通話200分、SMS 200通が1か月利用できます。金額はやや高いとも感じますが、どうやら店舗での購入にはSIM開通費などが加わるようです。このプランの定価を見つけることができなかったのですが、半額程度のよう。実はこの後もWind Treの店舗で定価では購入ができないなど、イタリアでのプリペイドSIMの購入は余計な費用がかかってしまうようです。

 

ただしVodafoneイタリアのSIMカードの回線品質はとてもよく5Gに接続できます。、冒頭の写真にあるようにミラノ中央駅では下りで400Mbpsの速度を記録しました。観光地のドゥオーモ広場などでも回線状況はよく、ホテルによってはプリペイドSIMを使ったほうが快適かもしれません。

 

iliadは自販機でeSIMを販売

 

ではイタリアではどのキャリアがeSIMを販売しているのでしょうか。VodafoneイタリアとTIMは販売しておらず、Wind TreとIliadが販売しています。このうちiliadは2018年に参入した新規キャリアで、そのため街中での店舗は少ないながらも、家電量販店などにプリペイドSIMの自動販売機を設置しています。こちらはミラノ地下鉄San Babila駅にある、UNIEUROという家電量販店の店内に設置されたものです。週末はスタッフがいて購入のサポートをしてくれることもあります。購入できるのは物理SIMカードとeSIMの両方に対応。

 

iliadのSIM自販機

 

イタリアではプリペイドSIMを買うときにパスポートの提示が必要です。この自動販売機も途中でパスポートをスキャンする必要があります。言語はイタリア語か英語で、途中で人間がやっていることを照明するために簡単な文を読む必要があるなど、若干ハードルが高いのが難点。また旅行者用のSIMではなく、あくまでもイタリアで使うためのプリペイド回線なので、購入時は標準で翌月も自動払いになってしまいます。そのため購入後は自分でiliadのWEBページに行き、自動継続をOFFにする必要があります。実は筆者は以前iliadのプリペイドSIMカードを買ったことがありますが、継続案内のメールが来た時は驚きました。ということで今回はiliadの購入はやめておきました。

 

料金はいくつかありますが、7.99ユーロ(約1300円)でイタリア120GB、ヨーロッパ9GBが毎月使えます。よくヨーロッパに行く人は毎月支払ってSIMをキープするのもいいのかもしれません。なお回線開通費用は別途9.99ユーロ(約1700円)かかります。

 

Iliadは料金が安い

 

Wind Treの店舗でeSIMの価格を調査

 

確実にeSIMを買うなら店舗だろうということで、ドゥオーモ広場からやや離れた場所にあるWind Treのショップを訪問しました。元々はWindとTre(数字の3の意味)と別々のキャリアでしたが、2020年に2社が合併。WINDTREのブランドでサービスを展開しています。

 

Wind Treの店舗

 

店に入ると先客がおり、5分ほど待って旅行者だけどプリペイドSIMが欲しいと伝えると、14.99ユーロのプランを教えてくれました。Tourist Passという商品で、1か月イタリア70GB、ヨーロッパ15GB、スイス3GB、通話はイタリア内定額、ヨーロッパ100分が使えます。価格は14.99ユーロ(約2500円)と悪くありません。ただし開通費用は不明です。

 

ショップのスタッフに価格を聞くと、物理SIMカードの場合は35ユーロ(約5800円)、eSIMの場合は40ユーロ(約6600円)とのこと。冒頭で買ったVodafoneイタリアとあまり変わらない値段ですが、このように定価で買えないためあまりお買い得ではありません。筆者はイタリアのあとドイツにも行くので、Vodafoneイタリアで「2か国約7000円」と考えて購入しましたが、イタリアだけの滞在ではこのWind Treも割高になってしまいますね。

 

Wind TreのTourist SIM。残念ながらこの価格では買えない

 

MVNOのプリペイドeSIMもある

 

それでは他にeSIMを安く買える方法は無いのでしょうか?実はヨーロッパ各国でMVNO事業を展開しているLyca Mobileが6.99ユーロ(約1200円)でイタリア1か月200GB、ヨーロッパ8GBのプリペイドSIMを販売しています。オンライン販売でeSIMも購入可能です。購入作業を進めてみても、開通費用は不要のようで、安価に購入できそうです。

 

Lyca MobileはオンラインでeSIMが買える

 

ただし購入作業を続けていくと、「支払は毎月自動継続で、停止する場合は自分で止めてください」との表示。iliadと同じで毎月使うことを前提としています。もちろん自分のアカウントページにログインして継続を留めればいいのですが、万が一忘れてしまうと後々面倒です。まあ毎月1200円ならiliad同様、よくヨーロッパに行く人は維持してもいいのかもしれません。

 

以上、イタリア・ミラノでのeSIM販売状況を現地で調べてみました。開通費などの手数料がかさむのが難点で、できれば大手キャリアがオンラインでeSIMの販売を始めてほしいところです。イタリアは毎年取材で訪問予定なので、引き続き新しい状況になれば購入レビューなどをしたいと思います。

 

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