eSIMレビュー
2023年12月12日

ドバイのeSIM購入はトラップ多数で購入困難、今回は断念

中東の観光地としても人気のドバイ。今回はドバイの現地でeSIM購入にチャレンジしてみました。事前情報では現地キャリアがeSIMを販売しており購入できそうだったのですが、今回の渡航では購入を断念。そこで今回はドバイでeSIMを買う場合の注意点などをまとめます。

①イミグレで無料SIMカードを配るドバイ

外国人観光客の受け入れに積極的なアラブ首長国連邦(UAE)のドバイは、入国するだけで無料のプリペイドSIMカードがもらえるという太っ腹なキャンペーンを続けています。入手方法は簡単で、ドバイの空港に降り立って入国審査の時にパスポートを出すと、審査終了と同時にパスポートと合わせて無料SIMカードも渡してくれるのです。このプリペイドSIMカードはUAE第2のキャリア、duのもの。無料データは1GBしかないため滞在が数日の場合は残高をチャージしたほうがいいでしょう。またUAEの最大キャリア、Etisalat(e&)は同社WEBページからオンラインで無料SIMカードの申請が可能。ドバイ入国後、空港内にあるEtisalatの店舗で同様に1GBのSIMカードがもらえます。ただしdu、Etisalat、どちらも物理SIMカードのみの配布でeSIMはもらえません。

 

入国時にduの1GB無料プリペイドSIMカードをもらえる

②空港でのeSIMはあるのか?

ではドバイに着いてから現地キャリアのeSIMを買うことはできるのでしょうか?ドバイのキャリアは前述したようにEtisalatとduがあり、さらにMVNOのVirgin Mobileもあります。大手航空会社の到着するターミナル1、ドバイのフラッグシップ航空会社のエミレーツが使うターミナル3は、どちらにも3社のカウンターがあります。イミグレーションを抜けて荷物を受け取ったあと、到着ロビーに向かえば見つかります。ターミナル3は3社が並んでおり比較・購入もしやすくなっています。

 

ドバイ空港ターミナル3、3キャリアのカウンターが並んでいる

実際に各キャリアそれぞれのeSIM販売状況をチェックしてみました。上の写真の右側の店から順次回っていきます。

◆Etisalat:プリペイドeSIMは無し

EtisalatはeSIMサービスを提供していますがポストペイドのみで、プリペイド向けには提供していません。そのためEtisalatのeSIMを購入することはできないのです。仕方なくここでは事前に申込していた無料SIMカードを受け取るだけにしました。パスポートを渡してユーザー登録が必要です。なお「残高はいくらいれる?」と聞いてきたのですが、このあとduでeSIMが買えると思ったのでチャージはしませんでした。

 

Etisalatでは物理SIMカードを受け取った

◆du:パンフレットにはeSIMの案内があるものの扱い無し

duの店は旅行者用のプリペイドSIMカードの案内パンフレットがあり、そこにはしっかりと「eSIM」と書かれています。実は事前にduはeSIMプリペイドを取り扱っていることは同社WEBページで確認済みです。そのため空港で確実に入手できると考えていたのです。

 

duのパンフレットにはeSIMと明記

そこでスタッフに「eSIMが欲しい」と伝えると在庫は無いといいます。今回が品切れなのか、普段から扱っていないのかを確認すると「空港の店舗では物理SIMカードのみ。eSIMが欲しい場合は市内の大型店舗へ向かってくれ」とのことでした。ということでduでのeSIM購入は断念することになってしまいました。

 

◆Virgin Mobile:eSIMはあるが空港価格で高すぎる

最後の望みでVirgin Mobileの店舗へ行き「eSIMはありますか?」と聞くと「すべてのSIMカードはeSIMもある」とのこと。なるほどMVNOはもしかするとこのあたりが柔軟なのかもしれません。これでようやくドバイ滞在中にeSIMが使えるぞと思い料金表を出してもらいました。

ドバイの為替レートは1ディルハムが約40円です。料金表を見ると旅行者向けのToursit Planが15日300ディルハム(約1万2000円)、30日500ディルハム(約2万円)とかなり高価。また一般プランの最低料金は30日10GBで239.4ディルハム(約9400円)です。ドバイのプリペイドSIMカードは高いとは聞いていましたが、1万円に近い価格はちょっと高すぎます。

 

 

空港のVirgin Mobileのプリペイドの価格

なんだか高いなあと思い、念のためVirgin MobileのWEBページのToursit Planを見てみると、7日間21GBで142.86ディルハム(約5600円)という、ちょうど短期滞在者向けにいいプランもあります。残念ながら空港ではこのリーズナブルなプランは販売していないようです。そこでVirgin Mobileでの購入も諦めました。

 

Virgin Mobileの正しい料金表。本来は安いプランもある

③旅行代理店のeSIM販売のトラップ

空港到着後のeSIM購入をあきらめて市内に向かおうと思ったのですが、空港のロビーで一服しつつSNSを見ていたら「UAEのeSIM 1GB無料」の広告が出てきました。SNSの広告は無用なものが多いのですが、今回ばかりは有用です。さっそくクリックしたところヨーロッパの旅行代理店が販売しているようで、しかもドバイ空港で受け取り可能。キャリアカウンターが並んでいる写真を上に掲載していますが、その一番左の旅行代理店、Kitmytripで受け取れます。なおターミナル1は到着ロビーに向かう通路に同じ代理店があります。

 

オンラインでeSIMを買いKitmytrip店舗で受領できるらしい

購入先のサイト alike.io にアクセスすると、たしかに「Tourlist eSIM for UAE」があります。しかも「AED 0」、無料です。早速購入に進んでみると、たしかに無料1GBのeSIMがあるものの、これを「Select」しても購入ページに進みません。つまり無料SIMはあるけど買えない(もらえない)のです。まあ今回は滞在数日なのであきらめて2GBのeSIM、51ディルハム(約2,000円)を選択、利用開始日を到着したその日にして購入作業を進めます。途中で受け取り場所の選択が出るのでドバイのターミナル1か3を選べます。

 

ナイスタイミングで出てきた広告(左)。購入ページでは無料のeSIMは選べなかった

購入が終了すると「バウチャーが届くのでそれを持って空港に受け取りに行くように」と表示されまっした。しばらく時間がかかると思い空港のファーストフード店で一服。なおここまでのネットアクセスはすべてドバイ空港の無料Wi-Fiですが速度は快適でした。

メールはすぐ届いたようですが、購入バウチャーではなく購入の確認メールでした。それから1時間待ってもバウチャーらしきものは届かないのでそのままKitmytripの店へ。確認メールを見せるとこれで受け取れるとのことでようやくプリペイドeSIMを入手できます。

ところが店舗のスタッフは「eSIMは置いていないのですよ」とのこと。ネットではeSIMを購入したのに、実際は物理SIMカードしか販売していないとのこと。これは大問題ですが、無いものをよこせとはいえず、泣く泣く物理SIMカードを受け取ってiPhoneにセットしたのでした。なおここでもパスポートを渡してユーザー登録が必要です。

 

ターミナル1のKitmySIM。オンラインでeSIMを買ったのに物理SIMカードを渡された

④ドバイ市内でもeSIMを購入できず

空港でのeSIM購入はあきらめ、ドバイ市内のduの店舗を回ってみました。街中にあるduの店舗やショッピングモールにある比較的大きめのduの店に行ったのですが、どこにもeSIMは無し。さらにドバイ最大のショッピングモール、ドバイモールの店ならあるよとの情報を得て行ってみたものの、ここにも在庫はありませんでした。duのeSIM購入は旅行者にはかなり困難で、Virgin Mobileの街中の店舗で21GBのプランを買うのが現実的かもしれません。

 

市内のduの店でもeSIMの販売は無し

 

ドバイモールのVirgin Mobile小型店。ここならeSIMが買える

⑤duでeSIM交換は可能、ただし日数が必要

ひとまず2GBとはいえ物理SIMカードが手にはいりましたし、それに加え空港で入手したdu、Etisalatの1GB SIMカードも1枚ずつあります。そこでもう今回はeSIM入手は断念しようと思いました。ところがEtisalatのモバイルアプリを入れて設定などを見ていたら、eSIMへの切り替えという項目があります。これなら物理SIMカードを買ってeSIM変更すればいいわけです。さっそくEtisalatの無料1GB SIMカードを使ってメニューを進んでみたのですが、UAEの身分証明書番号「UAE Pass」が必要。外国人のパスポートでは変更はできません。

 

アプリからのeSIM変更はUAEのIDカードが必要

EtisalatがeSIM切り替えができるのならduもできるはずだと、再びドバイモールを訪れてduの店に行くと受付で「出来る」とのこと。整理券をもらって30分以上待ち、ようやく自分の版が来たのでカウンターに向かいます。購入した2GBのプリペイドSIMカードをesIMに交換しようと、電話番号を伝えました。スタッフはあれこれカウンターのPCで操作を行いますが、首を傾げたりしています。しばらくすると事務所へ確認しに行くと席を離れ、5分ほどして戻ってきて言われた回答が「SIMカードを開通してから4-5日後でなくてはeSIMへの切り替えは出来ない」とのことでした。

 

ドバイモールのduストア。モールのかなり遠いところにあるので行くのも大変だった

⑥日本からのローミングとの比較

一般的に現地のプリペイドSIMカードの料金は割安ですが、UAEはあまり安くありません。前掲したVirgin MobileのToursit Planは以下の通りです。

  • ・7日間 21GB:142.86ディルハム(約5600円)
  • ・10日間 40GB:190.48ディルハム(約7500円)
  • ・15日間 データ定額:285.71ディルハム(約1万1200円)
  • ・30日間 データ定額:476.19ディルハム(約1万8700円)

日本のローミングですが、ahamoはしばらくUAEでは使えませんでしたが現在はカバーされています。そのため日本と共用で20GBまで使えます。またドコモの世界そのままギガのUAEの料金は1日980円。1週間の滞在なら約7000円ですから、Virgin Mobileの10日間SIMと変わりません。現地SIMの購入は現地の電話番号を入手できるくらいしかメリットは無さそうです。

 

⑦まとめ。とはいえ次回こそeSIM購入に挑戦

ここまで書いたようにドバイでのeSIM購入は「市内のVirgin Mobileの店で買う」のが一番現実的でしょう。あるいは各国対応のプリペイドeSIMをオンラインで直接販売しているところからの購入が確実です。「オンラインで購入、現地受け取り」の場合は今回の体験のように受け取りに行くとeSIMではなく物理SIMカードになる恐れもあるからです。

長々と書きましたが、海外に行ってみると公式には「販売している」とか「できる」とあっても、実際に現地では出来なかった、ということもよくあります。今回は時間が無く最終的にはeSIMの購入は出来ませんでしたが、次回改めてVirgin Mobileでの購入やduでの切り替えに挑戦してみたいと思います。

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