海外対応国の多いソラコムeSIMをヨーロッパで使ってみた
ソラコムが販売する「Soracom Mobile」は世界各国・地域で利用できるeSIMです。最大の特徴はアプリからのインストールが可能なことで、QRコードを別途読み取る必要無くすぐに使えます。たとえば海外旅行中、急に次の渡航先が変更になっても、Soracom Mobileなら次の地域のeSIMをすぐ買うことができるわけです。今回ヨーロッパ渡航で実際にSoracom Mobileを使ってみました。
目次
①「Soracom Mobile」の概要
Soracom Mobileはアプリをインストールすれば、アプリ内からeSIMをスマートフォン本体内にインストールできます。そのため使いたいと思った時に、すぐにeSIM購入やアクティベーションが簡単に出来るのです。ただし対応するOSはiOSのみで、Androidには対応していません。日本はiPhoneユーザーが多いとはいえ、他のOSに対応していないのはやや不便と感じるところです。
2023年10月末時点でSoracom Mobileが対応しているのは以下の5つの地域と、19か国です。このうちアジアパシフィックはカバー国別に3タイプ。いずれにもアメリカ合衆国が含まれます。
5つの地域:アジアパシフィック11、アジアパシフィック15、アジアパシフィック18、ヨーロッパ、北米
19か国:オセアニア、オーストラリア、バングラデッシュ、カンボジア、中国、香港、インド、インドネシア、日本、ラオス、マカオ、シンガポール、韓国、スリランカ、台湾、タイ、アメリカ合衆国、ベトナム
Soracom Mobileの使い方は簡単です。まずはiPhoneをWi-Fiに接続。AppStoreからSoracom Mobileをダウンロード。アプリを起動するとすぐにストアが表示されます。余計なホーム画面などがないのは簡潔で使いやすいかもしれません。一覧から購入したい地域または国を選ぶだけと簡単です。今回はドイツ、スペイン、イギリスの3か国を渡航するので、ヨーロッパ向けプランを選びました。なおヨーロッパは30か国をカバーします。料金は以下の通り(2023年10月末時点)
・1GB/30日:5.89ユーロ(約940円)
・3GB/30日:14.99ユーロ(約2,390円)
・5GB/30日:23.99ユーロ(約3,820円)
・10GB/30日:42.99ユーロ(約6840円)
今回は5GB/30日:23.99ユーロ(約3,820円)を購入しました。eSIMの有効期限は購入後180日なので、渡航の数日前に購入しておくことも可能。現地で電波を拾えば利用開始となります。アプリから料金を選択後、指示に従って進み、今回はクレジットカードで料金を支払いました。支払が完了すると「eSIMをインストールする」が表示出るので続けてタップしていきます。
指示に従えばeSIMのインストールが完了。簡単です。
②ドイツでテスト・ミュンヘン編
まずはドイツのミュンヘンで使ってみました。アプリのMy eSIMを開くと「ヨーロッパeSIM」の管理画面が表示されます。複数のeSIMを買っているときはここに複数表示されるようです。なおモバイル通信の設定を見るとデータローミングはOFFでした。Soracom MobileのeSIMはローミングがOFFのままで使えるようです。またiPhoneはeSIMをインストールするとデフォルトで副回線などわかりにくい名前が付くので、Soracomなどわかりやすい名前に変更しておいた方がいいでしょう。
ではミュンヘンで使ってみます。Wi-FiをOFFにしてしばらくするとアンテナピクトの横に「5G」の表記が出ます。ドイツでは5Gにつながるようです。これは速度も期待できると思いつつ、マリエン広場でさっそくスピードテストしてみました。
速度は下りが15Mbps前後、上りが10Mbps前後でした。5Gにつながっているのですが、どうやら速度は制限されているようです。他のエリアでも試したのですが、どこでもほぼ同じ速度。ソラコムはIoT機器向けのデータ回線を提供しており、グローバル向けサービスも行っています。そのためこの回線もスマートフォン向けではなくIoT機器向けなのでしょう。そのため速度はこの程度しか出ないものと思われます。
とはいえスマートフォンでYouTubeも十分見られますし、SNSの利用も問題ありません。メッセンジャーに送られれてくる動画の再生にやや時間がかかることもありましたが、実用的な最低限の速度は出しているという感じです。
また速度が遅いためあっという間にデータを使い切ってしまうこともありません。たとえば5Gで高速につながっていると、YouTubeアプリも高画質で動画を再生してしまいます。テザリングでノートPCを接続することも可能ですが、速度が抑えられているため間違って大容量のデータを瞬時に送受信してしまうこともないわけです。
③スペインでテスト・バルセロナ編
つづいてスペイン・バルセロナへやって来ました。バルセロナと言えばサグラダファミリア。平日でも観光客の多いエリアです。iPhoneの画面を見るとここでも5G回線につながりました。早速スピードテストを行うと、ここでも下りは15Mbps前後、上りは10Mbps前後。やはりどの国でもこの一定の速度が出るように調整されているように思います。
このサグラダファミリアを含め、バルセロナは地下鉄網が発達しているので車内でも使ってみました。アンテナピクトは5Gのままですが速度はかなり落ちてしまい、下り2Mbps前後、上り1.5Mbps前後。動画を見るのはややきついのでSNS利用程度がいいでしょうか。
なおバルセロナはスリがかなり多い街です。そのため地下鉄内でもあまりスマートフォンは出さないほうがいいですし、スマートフォンを使うときは画面に集中せず周りにも気を付けてください。特にサグラダファミリアの駅で降りるときは、地下鉄のホーム、改札口、地上に出る階段まで、スマートフォンは出さずに周りのスリに気を付けましょう。残念ながらバルセロナはそれくらい注意が必要な街なのです。
④イギリスでテスト・ロンドン編
そして最後に到着したのはロンドン。ここでももはや速度は測定する前からわかりきっていたのですが念のためテスト。回線はここでも5Gです。ロンドン・ビクトリアステーションでは他の2都市同様、下り15Mbps前後、上りは10Mbps前後でした。
なお時間があったので駅構内を歩き回ってみたところ、下り5Mbps程度まで落ちてしまう場所もありました。駅の構造上電波の入りにくい場所があるのかもしれません。Soracom Mobileで海外で速度があまり出ないと感じても、下り15Mbps程度が標準速度で、もしこれよりも遅い場合は電波環境が悪い、と考えるのがいいでしょう。
⑤日本からのローミングとの比較
Soracom Mobileでのヨーロッパ滞在ですが、速度は低速ながらもつながらない、ということはありませんでした。また低速がゆえに「ギガ」を使いすぎてしまわない、というメリットもあるでしょう。
では日本の回線とのローミングの比較をしてみます。ahamoは海外で20GBをそのまま使うことができるメリットがありますね。Soracom Mobileは最大で10GBまでです。しかしahamoが海外で高速に使えるのは15日まで。それ以上の長期間の海外渡航や現地滞在なら、30日有効のSoracom Mobileもメリットがあるでしょう。
またドコモの世界そのままギガは普段使っている契約のギガ数をそのまま海外で利用できます。Soracom Mobileとほぼ同じ料金を比較すると、以下のようになります。
Soracom Mobile 1GB/30日:5.89ユーロ(約940円)、ドコモ24時間980円
Soracom Mobile 3GB/30日:14.99ユーロ(約2,390円)、ドコモ3日間2,480円
Soracom Mobile 5GB/30日:23.99ユーロ(約3,820円)、ドコモ5日間3,980円
Soracom Mobile 10GB/30日:42.99ユーロ(約6840円)、ドコモ9日間6,880円
ドコモの24時間は24時間しか使えませんが、Soracom Mobileは1GBながらも30日使えます。またドコモで9日を超える場合、料金はさらに高くなります。海外で動画もガンガン見る、というのであれば世界そのままギガでもいいでしょうが、SNS程度で済ませるのならば、Soracom Mobileのほうが料金は割安かもしれません。このあたりは現地に着いてから情況を見て決めるのもいいかもしれません。
⑥まとめ。速度は遅いが確実につながる安心感
今回3か国3都市で使ってみたところ、速度はあまり出ないもののどの都市でもネットワークが見つからないということも無く、確実につなげることができました。また必要な時にアプリからすぐに購入できる点は使いやすいと感じます。いざって時用の海外回線としてiPhoneにアプリを入れておくのもいいかもしれません。
香港在住の携帯電話研究家。海外(特に中国)のスマートフォンや通信事情に精通。IoT、スマートシティー、MaaS、インダストリアルデザインなど活動の幅は広い。最新機種のみならずジャンク品から百万円のラグジュアリーモデルまであらゆる携帯電話・スマートフォンを購入する収集家でもあり、その数はまもなく1800台に達する。