ドコモ/au回線を自動切替できるデータeSIMを試してみた
当サイトのこちら(https://esim.love/blog/2023/08/23/985/)の記事でもご紹介した、1つのeSIM契約ながらドコモとauの回線を自動切替してより電波状態の良いほうでデータ通信できるという「SIMCONNECT」(旧名称 FIELDCONNECT eSIM)を実際に試してみました。
目次
①SIMCONNECTのサービス概要
SIMCONNECT(シムコネクト)は、1つのデータeSIM契約だけで、ドコモ(5G/4G/3G)とKDDI(au4G)の両方の電波(データ通信回線)を自動切替で利用できるというモバイルデータ通信専用のeSIMです。
これは複数のSIMを組み合わせて利用するマルチキャリア対応ではなく、1つのデータeSIM契約だけで複数のキャリアのサービスエリアを利用できるというのです。説明によれば利用するキャリアを手動で切り替える必要もないとのこと。スマホやタブレットの利用場所に応じて、電波が強い方の通信キャリア(ドコモまたはKDDI)が自動選択されモバイルデータ通信ができるそうです。
提供しているのは東京に本社、富山にもオフィスを構える株式会社PORTALFIELDで、同社のウェブサイトを拝見すると登山やアウトドアを楽しむ人たち向けにサービスや情報を届けることを目指した企業であることが分かりました。なるほど、山間部のモバイルネットワークでは電波が入りづらいところも少なくなく、万が一に備えて確実に電波をつかむためには1つの回線契約で複数のキャリアのネットワークを利用したいというニーズはうなづけます。
株式会社PORTALFIELDのウェブサイトにある代表取締役のメッセージには「私たちは、製品やサービスを通じて、自然の良さをより多くの人に届けたいと考えている情熱的な登山愛好家と技術革新者のチームです。」といった記述がありましたが、本当に登山者にとって必要なサービスを提供したいという熱意が伝わってきます。
さて、SIMCONNECTのサービス内容に戻りますが、ウェブサイトを見ると利用可能データ量150MBのIoTプラン(税込290円/月)から同3GBのパフォーマンスプラン(税込2,490円/月)まで5種類のプランが用意されています。一般的なMVNOの利用料に比べると割高ですが、山岳地帯で利用する際などの万が一の備えとしての提供を目指しているのでしょう。
それにしても、いったいどんな仕組みで異なるキャリアの自動切替を行っているのでしょうか。早速契約して、試してみました。
②SIMCONNECTを契約してiPhoneにインストール
SIMCONNECTの契約ですが、PORTALFIELD ONLINE STOREにおけるオンライン契約のみとなっています。ここから希望するプランを選択して契約に進んでいきます。
プランの購入手続きが終わると、契約手続きが進められ、手続きが完了するとeSIMのプロファイル情報がメールで届きます。筆者の場合、申込完了からeSIMプロファイル情報のメールが届くまで約2時間半かかりました(平日日中)。
この先は、iPhoneにSIMCONNECTのeSIMを追加する手順を説明します。
以上で、SIMCONNECTのeSIMの追加とセットアップが完了しました。いったいどんなキャリア名が表示されるのかと思ったら、アンテナピクト横には単に「eSIM」という表記。そして設定の中にある「情報」を確認したところ、Transatelなるキャリア表記が!
③仕組みはデータローミングだった
はい、じつはSIMCONNECTのウェブサイトをよく読むと、「SIMCONNECTはフランスのTransatel(トランザテル)社と協業で展開しています」との説明がありました。このTransatelというのは、フランス・パリに本社を置く通信事業者で、2019年2月29日にNTTコミュニケーションズが過半数の株式を取得、さらにその株式が2019年7月1日にNTT株式会社に譲渡され、現在NTTのグループ会社となっているようです。
Transatelはこれまでフランス、イギリス、ベルギーなどで170以上のMVNO事業をサポートしてきた、欧州の代表的なMVNE事業者なのだそう。
なるほど、SIMCONNECTのヒミツは海外の通信事業者であるTransatelの回線をeSIMとして提供し、日本国内ではドコモとKDDIのネットワークをローミングで利用しているというわけなのですね。だから、複数のSIMを用いるのではなく、1つのeSIMで両キャリアのネットワークを自動切替できるのです。いやはや、納得。
ちなみに、SIMCONNECTのeSIMが現在どちらのキャリアに接続されているのかは、iPhoneであればフィールドテストモードを起動して確認することができます。iPhoneの「電話」アプリを起動し、キーパッドから「*3001#12345#*」を入力して発信ボタンをタップすると、フィールドテストモードに入ります。
このiPhoneではデュアルSIMで利用していますので、モバイルデータ通信のほうの「Transatel」を選択し、「Serving Cell Info」をタップすると、現在のこのeSIMのネットワーク接続情報が確認できます。
PLNMというのはPublic Land Mobile Network Numberの略で公衆陸上移動体ネットワークと訳されます。日本では総務省が割当を行っており、こちら(https://www.soumu.go.jp/main_content/000749615.pdf)のリストから、PLNM番号がどの通信事業者であるかを確認することができます。筆者のiPhoneは画面上、44051と表示されていますから、現時点でKDDIのネットワークに接続されているということが分かります。
④まとめ
いったい、どのような仕組みで1つのeSIMで2つのキャリアを切り替えるのか疑問だったのですが、国際ローミングによるキャリア選択の仕組みが応用されていたとは!
筆者のメイン回線はワイモバイルだったりするんですが、それにSIMCONNECTを副回線として加えておけば、日本国内は主要3キャリアのネットワークを自由に切り替えて利用できる1台持ちが可能ですね。ソフトバンクは地方や山間部では電波状況が悪いところが少なくないので、これはいざというときに役立つかも(笑)
名桜大学人間健康学部健康情報学科教授。’90年代から携帯電話端末のレビューやサービスの解説を行ってきた。携帯電話情報サイトの編集長などを務めた後、2009年に大学教員に転身。以後スマートフォンの社会での活用などを研究テーマとして活躍。現在は医療・ヘルスケア分野へのデジタルデバイスの応用を中心に研究に従事。携帯電話コレクターとしても知られる。