eSIM Beginner
2023年6月1日

そもそもeSIMとは? eSIMについて知っておきたいこと

わが国でも着実に拡がりをみせているeSIMですが、まだ物理SIMしか使っていなくてeSIMの利便性をご存じない方のために、本稿ではeSIMについて徹底解説しましょう。

①オンライン経由で契約者情報を書き込めるeSIM

まずは携帯電話やスマートフォン(以下、スマホ等)に挿入して使用するSIMカード(Subscriber Identity Module)をご存じでしょうか。通信キャリア(ドコモやau、あるいはMVNOなど)と契約した際に発行されるICカードで、通話や通信をするために必要な契約者情報等(プロファイル)が書き込まれたものです。これをスマホ等に挿入することで、はじめて通信が可能になります。

物理SIMカード(写真はnanoSIM規格のもの)
物理SIMカードはこのようにスマホに挿入して使用する

これまでSIMカードにも複数の規格があったのですが、新たなSIMの規格としてスマホ等の端末内部にあるチップ(モジュール)に電子的にSIMの情報を追加(書き込み)ができる、いわば埋め込み型のSIMが登場しました。これが「eSIM」(embedded SIM)です。eSIM対応端末であれば、新しいプロファイルをダウンロードすることによって書き込むことができ、物理的なSIMカードの入れ替えなしに通信キャリアやサービスを変更することができます。

すなわち、かつてはMNPなどして新たな通信キャリアと契約する際には、店頭で契約してSIMカードを受け取るか、あるいはオンラインで申し込んだ後に郵送などでSIMカードを受け取る必要がありました。これがeSIMならば場合によってはオンラインのみで完結し、契約から通信回線の使用開始まで即日に利用可能になります。

②eSIMの利用シーン

物理的なICカードを受け取る必要がある従来のSIMカードに対して、eSIMであればさまざまな利用シーンが拡がってきます。たとえば異なる通信キャリアのデータプランを簡単に切り替えることができます。現在の利用している通信キャリアのプランに満足していなくて、別の通信キャリアのプランに移行したいと考えた時に、オンラインで即座に契約し回線契約を入れ替えるといった使い方が可能です。

また最近では1台のデバイスでに複数の電話番号を割り当てることができる「デュアルSIM」端末が増えています。たとえば1台のスマホに仕事用とプライベート用の電話番号を入れて使い分けたいといったニーズもあるでしょう。あるいは1つの回線契約は通話用とし、もう1つの回線契約はよりお得なMVNOを使ってデータ通信専用で契約して1台のスマホで使うといったことも可能です。こうした通信契約の追加がeSIMであればオンラインで簡単に済ませることが可能になるのです。

複数の通信契約を利用していれば、たとえば万が一メインで使っている通信キャリアのネットワークに何らかの問題が発生したときにも、すぐに他のネットワークに切り替えてしのぐことができます。

このほか海外旅行に行った際の海外でのローミング料金を削減できます。eSIMを利用して旅先で現地の通信キャリアのデータプランを購入して、インターネットや通話を利用するといった使い方ができます。

③eSIMはどんな端末で利用できるのか

eSIMはそもそも対応した端末でなければ利用できません。eSIMが利用可能な主要な端末は以下のとおりです。

〇iPhone・iPad

iPhone XS以降のモデル、iPad ProおよびiPad Airは第3世代以降のモデルがeSIMに対応しています。日本の主要なキャリア(docomo、au、SoftBank)はeSIMに対応しているため、これらの通信キャリアの契約を物理SIMとeSIMとで2回線を同時に1端末で利用することができます。なお、eSIMのプロファイルは複数登録可能ですが、アクティブにできるのは1回線のみです。また契約した通信キャリア以外のSIMを利用する場合は端末のSIMロックが解除されている必要があります。

筆者のiPhoneは物理SIM+eSIMにて2回線で運用。アンテナマークが2段になる。コントロールセンター画面では2回線の通信キャリア名が表示される(右)

〇Androidスマホ

Google Pixelであれば3以降のモデル、Samsung GalaxyであればS20以降の一部モデルなどが対応しています。それ以外のメーカーの端末でも、比較的最近のモデルでは大半がeSIMに対応しています。

筆者はOPPO Reno7 Aを2回線で運用。ディスプレイ上にアンテナマークが2個表示される

〇その他

一部のWindows PCや、ウェアラブルデバイスなどでもeSIM対応モデルが増えてきています。

④eSIMの導入手順

新たに通信キャリアで回線契約をする際には、ぜひeSIMの導入にトライしてみましょう。一般的な利用手順は以下のとおりです。

  1. 1.eSIMのプランを選ぶ

  2. 主要な通信キャリア(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクなど)はeSIMプランを提供していますので、公式サイトや店舗でプランを選びましょう。プランにはデータ通信量や通話料金などが含まれているので、自分の使用ニーズに合ったものを選びます。主要なMVNOもeSIMに対応してきました。副回線用にMVNOを契約し、既存回線に追加して利用するといった使い方もありますね。
  1. 2.eSIM QRコードを取得する

  2. eSIM対応のプランを契約すると、通信キャリアからeSIM QRコードを受け取ります。このQRコードにはeSIMの設定情報が含まれており、端末に読み込ませることでeSIMを有効化することができます。
  1. 3.設定アプリを開く

  2. 端末の設定アプリを開き、通信設定やモバイルデータの設定項目を探しましょう。一般的には「設定」→「ネットワークとインターネット」→「モバイルネットワーク」のような項目にあります。
  1. 4.eSIMを追加する

  2. 設定項目内で、「eSIMを追加する」または「データプランを追加する」といった選択肢がある場合、それを選びます。その後、カメラアプリが起動し、eSIM QRコードをスキャンするように指示されることがあります。
  1. 5.eSIM QRコードをスキャンする

  2. スキャンモードになったら、eSIM QRコードをデバイスのカメラで読み取ります。デバイスがQRコードを認識すると、eSIMが有効化され、新たな通信プランが適用されます。
  1. 6.設定の確認

  2. eSIMの設定が完了したら、設定アプリ内でeSIMが正しく表示されていることを確認しましょう。また、電波状況や通信速度も確認してください。

以上が、一般的なeSIMの設定の手順です。端末やキャリアの仕様によって手順が異なる場合がありますので、端末の取扱説明書や契約する通信キャリアのサポート情報を参考にすることをおすすめします。

まとめ

eSIMは、柔軟性や利便性の面で優れている一方で、まだ普及している段階であり、全ての端末や契約プランで利用できるわけではありません。また、従来の物理SIMカードは挿入するだけで済むのに対して、eSIMではやや煩雑な設定作業が必要で、一部のユーザーにとっては移行手続きが面倒と感じられるかもしれません。ただし、eSIMの普及が進むにつれて、より手軽に利用できるようになっていく可能性があります。

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