「壁越え」必須の中国用eSIMは事前オンライン購入がお勧め
世界各都市でのプリペイドeSIM購入体験記、第3回は中国・上海です。今回訪問したのは2023年6月下旬。中国はいわゆるネットの「壁」があり、中国キャリアのSIMカードでは海外SNSを中国内から利用することができません。そのため海外キャリアの国際ローミングサービスを使う必要があります。また海外キャリアのプリペイドSIMカードやeSIMを買っても接続できます。今回はオンラインで海外発売のeSIMを購入しました。スマートフォンは日本で購入したiPhone 12 miniを使います。
目次
①China Unicom Hong Kongの中国向けeSIMを購入
中国用のプリペイドSIMカードはかなり昔から販売されています。現地での購入は英語が通じず中国語を話す必要があることが大半ですし、支払いには現金またはモバイルペイメント(WeChat Pay、Alipay)だけしか使えないことが多く、さらに冒頭に書いたように壁越えできないという問題があります。また中国国内ではスマートフォン向けのeSIMは開放されていないため、eSIMを使うとなるとおのずと海外キャリアなどのeSIMを買う必要があります。
日本のアマゾンでも「中国SIM」で検索すると多数の製品が出てきます。今回購入したのは香港キャリア、China Unicom Hong Kong(中国聯通香港)のプリペイドeSIMです。この製品にしたのは中国の大手キャリア、China Unicom(中国聯通)の子会社であるため、中国で使う回線が明確であること、また同社は世界各国のプリペイドSIMカードを売っており、eSIMの品ぞろえも豊富だからです。なおWEBページは英語ですが、それほど難しい用語はないので大丈夫でしょう(ブラウザの翻訳機能を使うのもありです)。
China Unicom Hong KongのWEBページ「https://www.cuniq.com/global」を開きます。中国語だった場合は、ページ右上に「EN」の表示があるのでそこをクリックすると英語に切り替わります。メニューが並ぶ中から「Prepaid SIM Card」をクリック、続けて「Mainland」(中国大陸の意味)をクリックすれば、中国で利用できるSIMカードが表示されます。
今回は「Mainland, Macau & Taiwan Data SIM」を選びました。中国大陸、マカオ、台湾で使えますが、データ通信だけでいいことと、安い料金から購入できるからです。「Mainland & Macau Voice/Data SIM」は中国とマカオで使えますが、データ通信と音声通話にも対応。ただし音声通話は香港の電話番号になるためあまり使い勝手は高くありません。また価格はやや割高です。
商品を選ぶと各プランが表示されます。金額は香港ドル。なお公式サイトですが最初から割引価格が表示されていました。2023年6月時点の有効期限とデータ容量、価格は以下の通りです。購入制限やパスポートの身分登録も不要なので、必要枚数を複数買うのもいいでしょう。
・3日:3GB、HK$48(約870円)
・5日:5GB、HK$61(約1110円)
・8日:7GB、HK$88(約1600円)
・15日:9GB、HK$88(約1600円)
・30日:12GB、HK$120(約2180円)
・90日:30GB、HK238(約4320円)
・180日:33GB、HK$238(約4320円)
希望のプランを選んだら、プラン下にあるCoose eSIM ?のところをYesにします。Yesにしないと物理SIMカード購入になるので気を付けてください。その後、画面下の「Buy Now」で購入に進みます。
次の画面では、右側のEmail欄にメールアドレスを入れて、その右の「Get SMS Verification code」をクリック。メールに認証コードが送られてくるので、それをメールアドレスの下の欄に入れて「Verify」をクリック。この過程を経て、右側の商品欄の下の「Check Out」をクリックします。
支払いは海外クレジットカードや中国系のモバイルペイメントが使えます。
購入完了後、メールアドレスにQRコードが届きます。
②上海でeSIMを開通、使ってみる
上海には2つの空港がありますが、今回は浦東空港を利用。空港からはリニアモーターカーが市街地まで走っていますが、だいぶガタがきているようで、今は最高速度は時速300km/hまで。以前は最高430km/hで走行していました。地下鉄でも市内へ出れるのですが、まずはリニアに乗って途中まで移動するのが早いでしょう。なおリニアの運賃は50元(約1000円)、当日の航空券の半券があれば40元(約800円)になります。
6月下旬の上海は気温も湿度も高く、日中歩いているだけで汗だらけになってしまうほど。ホテルを取った繁華街の南京東路は、大きなお店のドアから室内の冷気が外に漏れてきており、その前を通りながら歩くと多少はまともに動けるかな、というほどでした。街中にはファーウェイのスマートフォンの広告も多く、中国に来たなと実感できます。
ホテルにチェックインしてからスマートフォンをホテルのWi-Fiに接続し、eSIMを登録します。オンラインで購入したeSIMなのでノートPCの画面にQRコードを出し、iPhoneから読み込ませます。QRコードでのeSIM読み込みの詳細は第2回のシンガポールの記事を参照にしてください。
シンガポールの空港でeSIM購入は注意、日本からの国際ローミングが手軽
https://esim.love/blog/2023/07/12/668/
eSIMの登録が終わるとSMSが届きます。そこにはeSIMの電話番号も通知されますが、香港キャリアの商品なので国番号852から始まる香港の番号になります。データ通信専用のため電話番号を使うことはありませんが、回線不調などで問い合わせするときは必要になるでしょう。
さてこれだけではiPhoneを上海で使うことはできません。このeSIMは香港=中国外のキャリアのものですから、設定のモバイル通信でデータローミングをONにする必要があります。なおオンラインで販売されている他の中国向けeSIMも大半は海外キャリア品なので、同様にデータローミングをONにしましょう。「ネットにつながらない」と思ったら、この設定の確認は必須です。
さてホテルのWi-FiをOFFにして、iPhone 12 miniに入れたeSIMでデータ通信を行うと無事にブラウザやメール、SNSへの接続ができました。アンテナピクト部分を見ると「5G」とあるように、5Gネットワークへもつながります。
ではさっそく上海の繁華街でスピードテスト。今回は仕事が忙しく夜しかテストできませんでしたが、南京東路では5G接続で下りが80-120Mbps、上りが10-40Mbpsといったところでした。速度からすると4G接続のようですが、十分快適でした。また通信系の展示会、MWC上海2023の開催された展示会場では通信キャリアの臨時基地局が設営されたこともあってか、下り200Mpbs超えと快適でした。
一方、地下鉄内でも5G接続でしたが、時には4G、さらにちょっと繁華街を離れたあたりの地下トンネル内では3Gに落ちることもありました。3Gにつながっているときは通信速度はかなり遅く、スピードテストもできないほど。ただ地下鉄は動いていますからすぐに4Gまたは5G接続が復活するのでなんとかなりました。
③まとめ。中国は事前eSIM購入かローミングを利用
壁越えが必要かつ現地SIMカード購入の敷居が高い中国では、中国到着前に中国用のeSIMの購入が現実的です。またドコモなど大手キャリアのユーザーは中国で国際ローミングサービスを使ったほうがいいでしょう。
なおネット上では様々な中国向けeSIMが売られていますが、定額を謳いながら通信速度が低いものもあります。仕事で確実にネット接続が必要な時は、価格ではなくさービス内容をよく確認したほうがいいでしょう。今回紹介したChina Unicom Hong KongのプリペイドeSIMは過去の利用者も多く実績もあり、中国キャリアの子会社製品なので安心して使えると思います。自分に合ったeSIMを各自ネットで探してみてください。
香港在住の携帯電話研究家。海外(特に中国)のスマートフォンや通信事情に精通。IoT、スマートシティー、MaaS、インダストリアルデザインなど活動の幅は広い。最新機種のみならずジャンク品から百万円のラグジュアリーモデルまであらゆる携帯電話・スマートフォンを購入する収集家でもあり、その数はまもなく1800台に達する。