中国用eSIM、香港から入国時の国境エリアでの注意点
世界各国で普及が進む5Gですが、実は中国は世界一の5G大国。2024年7月末時点で5G総ユーザー数は9億を超え、基地局の数も約400万基と他国を大きく上回っています。中国では毎月10機種以上の5Gスマートフォン新製品も販売されており、5Gはもはや当たり前の存在です。では中国の5Gはどれくらい高速なのでしょうか?中国向けのeSIMを購入して使ってみました。スマートフォンは日本発売のiPhone 12 miniでテストしています。
目次
日本語で買える手軽な中国eSIM
中国向けのeSIMはネットで調べると多数のものが出てきます。価格の安いものをいろいろ調べていたところ、 TSim Techというプロバイダの製品を見つけました。アプリはありませんが、ホームページは日本語にも対応、料金は明快という点が使いやすそうだと感じました。
TSim Techのホームページ
最初のページに中国eSIMが出てくるあたりからも、中国を重視しているのかもしれません。料金は明快で、
日数:5, 7, 15, 30日
データ:1, 3 , 5, 10 , 20, 30GB
以上から組み合わせて購入。ただし日数によっては選べないデータ量もあります。最低プランは5日間1GBで300円と格安。長期出張にも対応する最長の30日間30GBでも5200円と価格は高くありません。
さっそくスマートフォンから購入してみます。スマートフォンをWi-Fiに接続し、TSim Techのサイト(t-sim.hk)にアクセス。画面をスクロールして下に行くと言語設定を変えられます。なおアカウントを作ってログインすることもできます。アプリが無いのでログインはしなくても構いませんが、今回は念のためアカウントを作っておきました。
TSim Techにアクセス
画面左上の3本バー(メニュー)をタップ。Asiaをタップして進み、Mainland Chinaを選択。プラン選定画面になるので好みのものを選びます。今回は7日間5GBが1000円とキリがいいのでこちらを選択。
中国からプランを選ぶ
あとは指示に従うだけです。今回はGoogle Payで支払しました。すぐに購入が終わります。
支払い画面も簡単だ
メールを見るとすぐにQRコードが届いていることがわかります。メールを開けばそこからそのままeSIMのインストールリンクがあり、タップで進むことができます。インストール中に「CMLink」とあるように、このeSIMのベースはCMLinkの回線。CMLinkの回線は後述しますが、過去にも購入して使ったことがあります。
QRコードはメールですぐ届く。インストールもタップしていけばよい
インストール終了後、設定→モバイル通信を開くと「仕事」の名前でeSIMがインストールされています。毎回のことですがわかりにくいので「CMLink」に名前を変えました。そしてデータローミングをONにしておきます。なお念のためTSim TechのWEBページのアカウント情報を開くと、このeSIMの購入履歴が残っていました。ただしデータ容量などは確認できません。
eSIMインストール後はデータローミングをONにする
香港から中国に入国した時のネットワークの注意
中国への入国は北京や上海の空港から直接入る意外に、香港経由で鉄道やバスで深センに行く人も多いと思います。筆者も香港在住なので中国へはこのルートをよく使います。今回は香港から深セン国境まで行くバスに乗車して、その車内でこのeSIMを買いました(Wi-Fiは別のスマホのデータ回線)。
香港(旺角)から深セン国境行きのバス
バスを降りて香港国境を徒歩で超え、バスに再び数分乗って深センの国境到着。入国後さっそくスマートフォンのWi-Fiを切って、eSIMを使ってみました。ところが全くデータが流れません。アンテナピクトを見ると4Gの表記が出ているものの、電波の状態が悪い状況です。
CMLinkのeSIMの画面から「ネットワーク選択」をタップし、自動をOFFにしてみました。しばらくすると画面にはたくさんのキャリアの名前が表示されます。この中で中国移動、中国広電、中国電信以外は香港のキャリア。国境エリアだと香港のキャリアの電波も掴んでしまうのです。そしてこのeSIMは香港のCMLinの回線であり、香港の契約はしていないにもかかわらず電波が繋がってしまっている状態でした。繋がっているけど契約していない=データが流れないわけです。
そこで画面の中から中国移動(CHINA MOBILE)をタップ。するとすぐにアンテナピクトの表記が5Gに変わり、アンテナの数もフルに立ちました。深センの市内に入れば香港キャリアをつかむことは無いでしょうが、国境を越えすぐにデータ通信したい場合、繋がらない場合はネットワーク設定を確認することをお勧めします。
ネットワークの自動をOFFにして、中国移動を手動で選んだ
なお上記トラブルは今回入った国境(ファンガン)のイミグレーションエリアから少し歩いた地下鉄駅(ファンガン国境駅)付近まで続きました。
深センの繁華街でストレスない接続が可能
今回のTSim Techの回線はCMLinkのもの。CMLinkの中国での利用は以前上海でもテストしました。その時は上海各地で100-150Mbpsとかなりの速度が出ています。
深センの繁華街数か所で使ってみましたが、下り速度は上海同様に100-150Mbpsと高速。5Gなのでもっと速い速度が欲しいところですが、これでも十分でしょう。SNS利用やYouTube動画の視聴なども問題なし。またPCと接続してテザリング利用も可能です。
下り150Mbpsで十分な速度
また地下鉄内でもかなりの場所で5G接続のままで、速度も同様に最大150Mbpsを記録。中国最大キャリアの中国移動の回線をつかんでいることもあってか、4Gに落ちることはほとんどありませんでした。
地下鉄トンネル内でも同様に快適だ
日本のローミングよりも割安に使える
TSim TechのeSIMは価格の安さと安定した5G接続が使いやすいと感じました。また日本のローミングと比較した場合、ドコモの世界そのままギガの場合はデータ量に制限はありませんが、たとえば24時間使う場合は980円です。一方TSim Techは1GBの容量ながら5日間300円と、手軽に使えます。
またahamoなら最大15日間20GBが使え、1か月の基本料金は2970円です。ところが中国で20GBを使ってしまうと、日本ではデータが使えません。TSim Techなら15日20GBで3600円ですが、日本の回線とは別に使うことができます。
日本での「ギガ」の寮量が余りそうにない場合は、日本の回線で海外ローミングを使う際は注意が必要となるわけです。今回紹介したように料金が手軽なeSIMならば、海外旅行時の使用をお勧めできます。
香港在住の携帯電話研究家。海外(特に中国)のスマートフォンや通信事情に精通。IoT、スマートシティー、MaaS、インダストリアルデザインなど活動の幅は広い。最新機種のみならずジャンク品から百万円のラグジュアリーモデルまであらゆる携帯電話・スマートフォンを購入する収集家でもあり、その数はまもなく1800台に達する。