有効期限無し、従量料金でグローバル対応の「Roamless」のeSIMを香港でテスト
eSIMの料金プランは国や地域別で提供されており、購入したプランも有効期限があることが一般的です。今回はそれらのeSIMとは真逆のシステムの、「グローバル従量制、有効期限無し」というRoamlessのeSIMを香港で使ってみました。なお利用したスマートフォンは日本販売のiPhone 12 miniです。
目次
Roamlessの料金体系
RoamlessのeSIMはグローバル186の国と地域に対応しており、全世界で利用できます。また国ごとに料金は異なるものの、eSIMに残った残高に応じて各国で利用できます。たとえばA国のデータ料金が1GB=1ドル、B国は1GB=2ドルだった場合、eSIMに残高が20ドル入っていれば、「A国で20GB」または「B国で10GB」、さらには「A国で6GB(6ドル)とB国で7GB(14ドル)」のように使うことができるのです。
Roamlessのホームページには以下の特徴が書かれています。
・国別の固定プランの購入は不要
・使った分だけお支払い
・ウォレット内の資金は無期限で利用可能
・少額でも好きなだけ資金を追加可能
・モバイルデータまたはアプリ内通話(またはその両方)に資金を使用可能
特徴的な料金体系のRoamless
今回はRoamlessを香港で使ってみることにしました。香港での料金は、
1GB:2.95ドル(約450円)
となります。5GBなら5倍の14.75ドル(約2250円)、10GBなら10倍の29.5ドル(約4500円)となるわけです。そのためPCなどをつないで大量のデータ通信を行うにはやや割高感もあるかもしれません。たとえば日本のahamoなら海外利用は最大20GBが2970円です。そのためRoamlessはスマートフォンからある程度用途を考えて使うのがいいように感じます。
なおプリペイド方式ですから入れた分の料金しか利用できません。10ドルを入れておけば、10ドルを使い切ったところで通信は止まります。ポストペイドのように使いすぎて料金が青天井になってしまう、ということは無いのは安心です。
ちなみに代表的な他の国の料金を見ると、1GBあたりの料金は
アメリカ:2.45ドル(約370円)
イギリス:2.45ドル(約370円)
フランス:2.45ドル(約370円)
日本:3.45ドル(約530円)
中国:3.95ドル(約600円)
台湾:6.45ドル(約980円)
韓国:10.95ドル(約1670円)
グアム:16.45ドル(約2510円)
以上のようになっており、欧米は比較的リーズナブルなものの、アジアは割高です。またグアムはかなり高価です。このためRoamlessを使う場合はあらかじめ各国の料金を確認してから使う方がいいでしょう。
国ごとの料金を確認可能
アプリからユーザー登録だけで400MBが無料、5Gでまあまあの速度
Roamlessはアプリがあり、アプリからeSIMの導入と料金の購入が可能です。スマートフォンをWi-Fiに接続してからアプリをインストール、アプリを開いた後はユーザー登録が必要です。氏名、メールアドレス、パスワードの設定後にアプリのホーム画面が表示されます。最初に「eSIMを有効にする」をタップして、スマートフォンへeSIMを導入します。特に難しいことはなく、指示に従って行けばインストールできます。一般的なeSIMは先にプランを購入する作業後にeSIMを入れることが多いのですが、RoamlessはまずeSIMを先にインストールします。
ユーザー登録後のホーム画面(左)。画面から「eSIMを有効にする」をタップして、スマートフォンにインストールする
eSIMインストール後はわかりやすい名前(今回はミスタイプでRoadless)に変更したほうがベターです。Wi-Fiをここ出来ると5Gのアンテナピクトが立ちました。なおデータローミングはONにするべきですが、今回はOFFのままでもデータ通信可能でした。
eSIMインストールが終わればすぐにアンテナピクトが立つ
さてこの状態では通信料金の残高はゼロのはずですが、Roamlessは初回インストール時に香港では400MBのボーナスがもらえます。ホーム画面に戻ると中央には現在の残高と、利用できるデータ量が表示されます。お金を入れていないので残高はないはずですが、400MBの料金分として1.25ドルが表示され、利用可能なデータ量が0.4GBと表示されます。さっそくスピードテストを行いましたが、5G接続にもかかわらず下りは45Mbps前後、上りは20Mbps前後。速度を絞っているのか、あるいは実際は4G回線に接続されているようです。
インストール後、1.25ドル分のクレジットが無料でもらえる
追加した残高は国を超えて永久に利用可能
さてその後、ブラウザを見たり再びスピードテストを行っていると、画面に残高が少なくなったとの通知が出てきました。アプリのホーム画面を見ると、残高と利用可能なデータ量が確かに減っています。おそらく200MB分になると警告が来るようです。そこで残高を追加することにしました。アプリ画面中央の「資金を追加」をタップします。すると5、10、20、50ドルの表示があり、それぞれをタップすると各国で何GBが使えるかが表示されます。「ギガ数」で残高を購入するのではなく、ドルの金額で購入し、それに応じて国ごとに利用可能なデータ量が表示されるわけです。
残高が少なくなると警告が表示される。ドルの金額に応じて利用できるデータが表示される
ドルの金額は手動で入力もできます。するとその下の一覧の各国の利用できるデータ量も即座に反映されます。今回は香港で2GBちょとを入れたかったので、手動で7ドルにしました。なおその下のマヨットでは同じ金額を入れても使える量が異なることがわかります。また20ドル未満の購入には0.35ドルの手数料がかかります。「支払い方法を選択」をタップするとクレジットカードの入力画面となり、購入が完了するとアプリ画面に残高と利用可能データ量が反映されます。
料金は手動でも入力可能。20ドル未満は手数料がかかる。購入後はアプリ画面にすぐ反映される
さて料金を追加した状態で、引き続き使ってみました。通信速度は特に変わらずで、最初に無料でもらえたボーナス分は低速、ということもありません。そして最終的に残高が残ったら、それはまた別の国でもそのまま使うことができるわけです。
通信速度は残高購入後もほぼ一定だった
緊急用途として使うのもあり
Roamlessは従量料金のためつなぎっぱなしにする使い方には向いていないものの、余った残高は永久になくなることが無く、国により料金は異なりますが、どの国でも有効利用できる点が優れていると感じました。ただし料金がかなり高い国もあるので、アプリの資金を追加の画面から渡航先の料金をあらかじめ確認しておくべきでしょう。海外渡航時に飛行機が着陸してから現地ですぐに使いたい、というときの予備用にもいいと感じました。維持費が実質かからないので、困ったとき用のeSIMとしてスマートフォンに「とりあえず入れておく」というのも良さそうです。
香港在住の携帯電話研究家。海外(特に中国)のスマートフォンや通信事情に精通。IoT、スマートシティー、MaaS、インダストリアルデザインなど活動の幅は広い。最新機種のみならずジャンク品から百万円のラグジュアリーモデルまであらゆる携帯電話・スマートフォンを購入する収集家でもあり、その数はまもなく1800台に達する。