山根康宏のワールドeSIMレポート
2024年11月25日

1Gbpsと爆速なスペイン現地のeSIMを実際にバルセロナで買ってみた

スペインの通信キャリア各社は2024年からプリペイドeSIMの販売を始めています。これまでは物理SIMしか販売されていませんでしたが、eSIMになったことでスマートフォンの活用の幅も広がります。実際に現地ではどのように販売されているのか、短い滞在中にキャリア店舗などを回って購入してみました。

スペインキャリアのeSIM販売状況

スペインで通信事業を展開しているキャリアのうち、eSIMの販売が確認できたのはVodafone、Orange、Yoigo、そしてMVNOのREBARAでした。各社これまでは契約回線でしかeSIMを提供していなかったケースもありましたが、プリペイドでもようやく買えるようになったのです。スペインはプリペイドSIMカードを買う場合にパスポートなどによる本人認証が必要ですが、eSIMも同様で現時点では店舗でパスポートを提示して購入する必要があります。

スペインのキャリアもプリペイドeSIMの販売を開始

わざわざスペイン各都市のキャリアの店舗に行かずとも、現在はオンラインで多くのプロバイダがスペイン対応のプリペイドのeSIMを販売しています。そのため現地で購入する必要は無いと考える人も多いでしょう。しかし特にスペインでは、キャリア販売のプリペイドSIMカードは格安です。たとえば過去にもスペインやヨーロッパで使えるeSIMを使って記事にしています。

「VOYAGEESIM for Europe」でヨーロッパ旅行も快適5G通信が可能だった

海外対応国の多いソラコムeSIMをヨーロッパで使ってみた

どちらも快適に使えました。一方、スペインのキャリアのeSIMは料金がよりやすく、しかも5Gに接続できます。たとえばVodafoneの場合は15ユーロ(約2500円)で100GB、30日間使えます。さらにヨーロッパのローミングも8GBついています。多くの国の場合、eSIMプロバイダよりも地元キャリアのeSIMのほうが格安で利用できます。ただし国によってはプリペイドeSIMが買いにくかったり、シンガポールのチャンギ国際空港のように定価の数倍で販売している場所があったり、ドイツのように事実上販売拒否のところもあります。

つまりeSIMプロバイダがいいか、現地購入がいいかは国や都市ごとにことなるのです。本連載では今回のように実際に現地での購入体験も記事化していきます。

スペインは地元キャリアの料金が格安だ

バルセロナ空港でもeSIMを販売

今回はスペインのバルセロナを訪問しました。まずはバルセロナ空港からです。到着したのは朝の8時。ターミナル1の到着ロビーには以前はVodafoneの店舗があったのですが、ここはいわゆる観光客価格で、定価よりかなり高い値段でプリペイドSIMカードを販売していました。2024年11月に訪問するとVodafoneは無くなっており、スペインの雑貨チェーン店ALE-HOPのお店になっていました。ちなみにこのALE-HOP、格安で独自デザインの雑貨や日用品が買えるので、スペインのお土産を買うにも適したお店です。

VodafoneはALE-HOPになっていた

その隣のスーツケース販売店に「Prepaid SIM」の表示がありここでSIMカードを購入できそうです。ただしスタッフが接客中だったため話を聞くことはできませんでした。一方コンビニエンスストアの店頭にはヨーロッパ各国でサービスを展開しているLebarとLycamobileの看板のポップアップストアを発見。Lebaraは「eSIM」とあり、ここでeSIMを販売しています。しかし朝8時はスタッフが不在で購入はできませんでした。

コンビニ店頭でLebaraのeSIMを売っている

手書きで「eSIM」の案内も

ちなみにLebaraの料金を調べると、7ユーロで7GBですが、10ユーロでは25GBにボーナス25GBが付き50GBと一気に大容量になります。やはり地元キャリアは格安ですね。ただしここは空港なので、実際の販売価格は不明です。

Lebaraスペインの料金

バルセロナ・エスパーニャ広場でeSIM購入をトライ

空港からしばらくは日本のローミング(今回は楽天モバイル)を使いつつ、空港バスに乗って市中心部に近い観光エリアでもあるエスパーニャ広場で下車しました。ここにあるショッピングセンターの地下にはキャリアの店舗が入っています。ファーストフード店やレストラン、また家電量販店のfnacなども入っており、食事なども済ませることができる場所です。

エスパーニャ広場の競技場地下にショッピングモールがある

さっそくVodafoneの店舗を訪れます。プリペイドはありますかと聞くとあるとのこと。そこでパスポートを取り出し購入作業に進み、「eSIMにしてほしいのですが」と伝えると「eSIMはここでは無いので、他の店舗へ」とのこと。実はここのVodafoneは過去に何度か訪れているのですが、大型展示会期間中は「プリペイドSIMカードは品切れ中」と言われることもあって、まだ1度も購入できたことはありません。今回はSIMカードはあったもののeSIMが無いとのことで、店舗によっては同じようなことを言われるケースがあるかもしれません。

なおすぐ隣がスペインNo.1キャリアのMovistarだったので念のため聞いてみたのですが、MovistarそのものがプリペイドSIMサービスをやっておらずで「向かいのOrangeにいくといいよ」と教えてくれました。

VodafoneにはプリペイドeSIMは無し。隣のMovistarはプリペイドをやっていない

そして向かい側、サブウェイサンドイッチのすぐ横にあるOrangeの店舗へ。ここは店の表に大きく「eSIM」「Prepaid」と書いてありますから確実に買えそうです。先客の対応が長く5分ほど待たされましたが、「プリペイドeSIMが買いたい」と伝えるとあるとのこと。

念のため価格を聞くと「30ユーロで100GBのプランのみ」とのこと。直前にOrangeのWEBページで料金を見ていたところ、100GBプランは20ユーロ。10ユーロは手数料かもしれませんが、より安い10ユーロで25GB+ボーナス30GB、合計55GBのプランのeSIMの案内は無し。ここは観光地でもあるため、すんなりと定価で安価な料金を買うことはできないようです。

Orangeは高いプランのみ、しかも定価より高い

このように事前にキャリアの料金プランを調べていても、実際に現地に行くとその料金で買えなかったり、高いプランしか進められないということはよくあることです。このようなトラブルがあると「だったらeSIMプロバイダで事前に買ったほうが楽」と思いますよね。今やeSIMは24時間世界中どこからも買える時代。明確な料金で販売してほしいものです。

Vodafoneの大型店で購入、しかしトラップが

エスパーニャ広場でのeSIM購入はあきらめ、バルセロナの中心地であるカタルーニャ広場へ移動、こちらのVodafoneへ行くことにしました。ここのVodafoneはプリペイドSIMカードを定価で購入できます。というのも店舗内にプリペイドSIMカードの自動販売機があるのです。

カタルーニャ広場へ移動

Vodafoneの店舗

プリペイドSIMカードの購入にはパスポートが必要ですが、この自動販売機はパスポートをスキャンすることも可能で、完全に非対面でプリペイドSIMカードを買うことができるのです。最初に言語の英語を選び、あとはプリペイドSIMカードを選択、画面に料金プランが出てきますが、安い料金は最初の画面に出ていないのがちょっとしたトラップ。料金一覧画面にある「+More Tafiff」を推すと次の画面で15ユーロで100GBや10ユーロで50GBのプリペイドSIMカードを買うことができます。

非対面で定価でプリペイドSIMカードが買える

ただしこの自動販売機はeSIMの購入には対応していません。そこでスタッフに「eSIMを買いたい」と伝えました。真っ先に言われたのが「20ユーロで100GB」。定価は15ユーロのはずなのですが、スタッフは「これが一番お勧め」としか言ってきません。腑に落ちないものの「もっと下のプランでいい」と伝えると、「15ユーロで50GB」とのこと。こちらも定価は10ユーロです。5ユーロは対面手数料なのかもしれません。納得いかないもののパスポートを見せて購入手続き、eSIMはプリンターで印刷されましたがスタッフがそのまま筆者のスマートフォン(日本購入のiPhone 12 mini)にインストールを進めました。

パスポートを渡して購入手続き

数分でインストールが終わり、すぐに5Gの電波が経って使えるようになりました。スタッフは忙しいようで購入手続き終了後に別の客の対応を始めたのですが、テーブルの上を見るとプリペイドSIMの定価が明示していあります。やはり納得がいかないのですがすでに支払いを済ませてしまっており、時間も無いので店を後にしました。

その後カタルーニャ広場の正面にあるOrangeの店舗にも立ち寄りました。場所がいいためここはいつも混雑しており、プリペイドSIMカードの購入には時間がかなりかかるので敬遠していたお店です。

カタルーニャ広場の南側にあるOrange

今回も店内は人であふれていました。eSIM半場状況だけでも聞こうとプリペイドSIMカードを買いたいとスタッフに伝えると「そちらで立って待っていて」とのつたない返事。ふと店内の入り口の横を見ると自販機があります。しかもここには「eSIM対応」と明記。これなら待たずに買うことができます。ただしすでにVodafoneで買ってしまっていることもあり今回は断念。次回使ってみようと思います。

OrangeのプリペイドSIM自販機はeSIM対応

通信速度は快適、非対面販売に期待

Vodafoneの回線をバルセロナで使ってみましたが、速度は快適です。エリアによっては1000Mbps=1Gbpsを軽くオーバー。ここまで速いとスマートフォン単体だけではなく、ノートPCを接続してのテザリング利用にもストレスが無いでしょう。

1Gbpsの速度を軽く超える

また地下鉄の一部エリアでも同様に1Gbpsを超えました。回線に関しての不満は全くありません。

地下鉄でもここまで高速なエリアがある

繁華街では300-500Mbpsと速度が落ちる場所があったものの、この速度でも十分快適でしょう。なお地下鉄の一部エリアでは4Gに落ちることもありました。泊まったホテルは路地裏でしたが5Gで200Mbps程度出ており、ホテルのWi-Fiよりはるかに高速でした。

繁華街では500Mbpsも記録

このようにスペイン・バルセロナでは現地のeSIMが爆速であり、時間を作ってでも現地到着後にeSIMを買ったほうが快適にスマートフォンを使うことができます。そのためにも各キャリアの店舗では料金の明瞭化と定価販売を徹底してほしいものです。また実際にスペインに言ってプリペイドeSIMを買う場合は、事前にキャリアのWEBページで料金を確認の上、購入時にそれを見せるといったことをするのがいいかもしれません。

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