eSIMも大容量の時代、ヨーロッパ1か月300GBで5000円のeSIMを試す
動画視聴だけではなく動画の配信、あるいは仕事で大量のデータを送るなど、海外渡航時に大量のデータ容量が必要ということもあるでしょう。日本国内ではどちらかといえば「どれだけ安いか」ということを念頭に契約プランを選ぶでしょう。一方仕事で海外に行く場合などは、価格も重要ながらより多くの容量を購入することで安心してデータ通信ができることも必要というケースもあるでしょう。海外で販売されているeSIMは数GBから10GBクラスの製品が多くありますが、最近では100GBを超えるプランも登場しています。今回は300GBを約5000円で使えるeSIMを試してみました。なおスマートフォンは日本販売のiPhone 12 miniです。
目次
ドイツのホテルにチェックイン、ホテルのWi-Fiが繋がらない
2024年9月上旬、ベルリンで開催されるIFA2024の取材を行いました。展示会期間中はどこの都市でもホテルの価格は高くなるもので、ある程度の金額を出してもホステルクラスの安宿しか泊れないということもあります。今回は展示会場から電車で2駅、徒歩15分というホテルを選びました。6拍で920ユーロ、1日あたり約2万5000円でした。
9月にベルリンで開催されるIFA
ホテルは小ぎれいで部屋も広く、バストイレ付き。そして簡単ながらも朝食もついています。なかなかいいホテルと思ったのですが、困ったのがネット環境。フロアの奥の部屋ということもあってか、ホテルのWi-Fiをがいくつか見えるものの、全くつながりません。また繋がっても速度は遅くて使い物にならず。展示会期間中ということもあり満室で部屋の変更も不可。こうなると仕事ができません。
1泊2万5000円の部屋。展示会場中は料金が高い
ここで便利なのがeSIMです。eSIM対応スマートフォンさえあれば、eSIMを購入してすぐにデータ通信を始めることができます。とはいえ部屋のネット環境は悪く、ホテルのフロントエリアまで行ってWi-Fi接続を確保。その状態でeSIMを検索してみました。
ホテルで仕事に使いますから、データ容量は大容量であることが必須。数GBでは足りません。一方で「Unlimited」(定額)のeSIMも良く見つかりますが、こちらは要注意。データ使い放題でも速度が低速で使い物にならないケースもあるからです。そこで100GB以上のeSIMを調べてみたところ、AIRHUBの販売するヨーロッパ向けeSIMが見つかりました。
AIRHUBのホームページ
AIRHUBのヨーロッパ300GBプランを発見
AIRHUBは世界各国のeSIMを販売してますが、トップページに「Europe eSI 300GB」とあるように、このeSIMをイチオシしています。プランは15日と30日があるのですが、15日が31.86ドル(約4670円)、30日が35.11ドル(約5140円)。IFAの取材は1週間ですが、実は月末にもヨーロッパに来るかもしれず、30日を購入することにしました。
EU 300GB 30日で35.11ドル
なおこのeSIMは他のeSIMプロバイダでも販売されており、ヨーロッパ向けとして大々的に売り出しをかけているようです。
さてAIRHUBの案内を見ると、アプリを入れて買うだけ、と書いています。ということでAIRHUBのアプリをインストール。まずはアカウント登録を行ないます。ホーム画面では画面下のRegionalをタップして、Europeを選択、あとは希望の容量を選んで進むだけです。ただしベルリンの通信回線が悪かったのか、時間が悪かったのか、購入の手前の画面から動かずアプリでの購入は出来ずで、実は購入作業はPCから行いました。
アプリを入れて、アカウント登録後にeSIMを選んでいく
クレジットカードで支払いを済ませる
購入後はすぐにeSIMのQRコードが届くのでインストール。アプリ画面下のMy eSIMsを見るとインストールしたeSIMが表示されます。ちなみになぜか購入していない日本のeSIMも表示されるのですが、ボーナスとして無料で配布されたようです。キャンペーンか何かだったのでしょうか。さて上のヨーロッパのeSIMの「Details」をタップすると、eSIMのダイレクトインストール、QRコード表示、手動インストール用のパラメーター表示を選べます。ここはダイレクトインストールでそのまま進めます。インストール後はeSIMのデータローミングをONにしておきます。
購入後、My eSIMsに登録されている。Detailsからインストール。インストール後データローミングはONにする
ドイツではO2回線、5G接続は快適
さっそく使ってみました。このeSIMの回線はドイツO2のもの、そのためドイツ国内での使用は全く問題ないはずです。結論から先に言うと、屋外で5Gに接続した場合はかなり快適でした。下り速度は100から200Gbps、YouTube動画も高画質で見ることができます。しかもデータ容量が300GBあるので使い切ってしまう心配もありません。
地下鉄駅でも地上がすぐ見える入り口付近なら高速だ
一方で室内や地下鉄のトンネルなどでは速度は出ず、かなり低速なこともありました。また5G接続が不調になり一切データ通信できないことも。その場合は設定のモバイル通信からeSIMの接続を「5Gオート」から「4G」に切り替える必要があるときもありました。このあたりは料金が安い分、仕方ないのかもしれません。
室内や地下などその他のエリアでも測定。低速な時もある
ドイツ以外は検証が必要だが、定額感覚は便利
購入したeSIMはドイツ以外のEU、ヨーロッパでも使えます。そのため各国を周遊するユーザーにも便利な製品です。今回はトランジットでロンドンのヒースロー空港に立ち寄ったので、そこでテストしてみました。すると回線は4Gと3Gを行き来するような情況で、速度も5Mbps以下とかなり低速でした。ロンドン市内も同じ状況なのかは検証が必要ですが、ベースがドイツのキャリアO2の回線だけに、他のヨーロッパ諸国では国によって速度に差が出るかもしれません。
ロンドンのヒースロー空港にて
とはいえ約5000円で300GBが1か月使えるというのは1日あたり10GBですから、ほぼ定額利用できるといっていいでしょう。今回は外出中よりもWi-Fiの使えないホテルでの使用が多く、合計約10日間で30GB程度をPCからのテザリングで使いました。300GBは不要かもしれませんが、これだけあれば不足することはまずなく、金額を考えてもヨーロッパで使うeSIMの第一候補にできるかもしれません。
今後は次のヨーロッパ渡航時に、他の国でもこのeSIMの速度検証を行ってみたいと思います。
香港在住の携帯電話研究家。海外(特に中国)のスマートフォンや通信事情に精通。IoT、スマートシティー、MaaS、インダストリアルデザインなど活動の幅は広い。最新機種のみならずジャンク品から百万円のラグジュアリーモデルまであらゆる携帯電話・スマートフォンを購入する収集家でもあり、その数はまもなく1800台に達する。