山根康宏のワールドeSIMレポート
2023年10月5日

ヨーロッパ最大のIT展示会でeSIMスマホや折りたたみスマホをチェック

2023年9月1日から5日まで、ドイツ・ベルリンでヨーロッパ最大級の家電とITの展示会、IFA2023が開催されました。スマートフォンの新製品もいくつか発表になる同展示会で見つけたeSIM対応新機種などを紹介します。

①世界最薄折りたたみスマホ「HONOR Magic V2」

折りたたみスマートフォンといえばサムスンの製品が日本を含む世界各国で販売されています。元ファーウェイから分社化したHONOR(オナー)も最近は折りたたみスマートフォンに注力しており、IFA2023では世界最薄という横折り式のスマートフォン「HONOR Magic V2」のグローバルバージョンを発表しました。

 

HONOR Magic V2

本体を開くと7.92インチのディスプレイが現れます。開いたときのサイズは縦横が156.7 x 145.4mm、厚さはわずか4.7mm。一般的なタブレットよりももちろん薄い大きさです。チップセットはSnapdragon 8 Gen 2を搭載するので本体の動作は快適です。カメラは5000万画素を2つ(広角・超広角)と2000万画素(2.5倍望遠)とこちらも強力です。

 

7.92インチディスプレイを搭載、厚さは4.7mm

本体を閉じると156.7 x 74.1 x 9.9mm、厚さは1センチを切ります。もはや普通のスマートフォンと変わらない大きさになるのです。しかも重量は231gです。iPhone 15 Pro Maxはチタンボディーで軽くなりましたが221g。またiPhone 14 Pro Maxは240g。HONOR Magic V2は折りたたみ型なのに、普通のスマートフォンと比べられる大きさなのです。

 

折りたたむと普通のスマートフォンとほとんど変わらないサイズ

設定画面からネットワーク周りを見るとしっかりとeSIMに対応していることがわかります。2023年に入ってから大手メーカーのスマートフォンは上位モデルを中心にeSIM対応が標準的になりました。なおeSIM周りの管理は個人的にはiPhoneよりAndroidスマートフォンのほうがややわかりやすいようにも思います。HONOR Magic V2のグローバル発売は2024年1月ころの予定とのこと。

 

eSIMにも対応する

②バッグのように持ち歩く折りたたみ「HONOR V Purse」

HONORは同時に「HONOR V Purse」も発表しています。HONOR Magic V2とは異なりディスプレイを内側に折りたたむ構造のモデル。閉じると両面がディスプレイになりますが、その部分に模様やアクセサリなどを表示させ、さらに本体をチェーンで持てるようにして小型のバッグのように持ち運べるという、ファッション性を狙った製品です。

 

HONOR V Purse

開けば7.71インチディスプレイが現れます。HONOR V Purseはコンセプトモデルとして発表されましたが、9月末に中国で実機の販売が始まりました。チップセットがSnapdragon 778Gと一世代前のミドルハイレンジ向けのためか、価格は5999元(約12万円)と横折り式モデルとしては安めです。なお中国向けモデルはeSIMは非対応。今後グローバルでも発売になるときはeSIM対応になるでしょう。

 

開くと7.71インチディスプレイとなる

③自分で分解修理可能、8年アップデートの「Fairpohne 5」

ヨーロッパのFairphoneというメーカーを知っていますか?本体を分解可能な構造にしておりパーツも分売、自分で修理ができるスマートフォンを開発しています。その最新モデル「Fairphone 5」がIFA2023で発表されました。本体は再生素材を多用しており、サステナブルを考えた設計になっています。チップセットはクアルコムの「QCM6490」というIoTデバイス向けを採用するちょっと変わった設計です。

 

Fairphone 5

昔のスマートフォンのように電池カバーは爪先ですぐに外せます。バッテリーももちろん交換可能です。そしてプラスのネジで基盤などが固定されているので、それをはずしていけばカメラやディスプレイなど、モジュールごとに取り外しができます。故障しやすいUSB端子部分も基盤セットで交換可能です。なおカメラは5000万画素を2つ(広角、超広角)搭載しているので、数年は十分実用的です。

 

電池交換はもちろんのこと、本体も完全分解できる

本体保証は5年、OSアップデートは5年、セキュリティーアップデートは8年の保証が付きます。ヨーロッパではかなり長く同じスマートフォンを使い続ける人もいるとのこと。またeSIMへの対応は数年後には世界中のキャリアが標準で採用していることもあるだろうから、このモデルから対応させたとのことです。プラスチックカードも使いませんからeSIMは環境にやさしいSIMとも言えます。

 

eSIM対応で数年後も安心だ

④マイナーブランドもeSIM対応「HANMAR BLADE 5G」

IFA2023では他にもヨーロッパメーカーのスマートフォンをいくつか見かけました。日本などアジアでは滅多に見ない製品ですが、ヨーロッパでは家電量販店などで販売されているそうです。ポーランドのMyPhoneの「HANMAR BLADE 5G」もそんなスマートフォンの1つ。タフなボディーの製品で、IP68の防水防塵やMIL-STD-810Gに対応します。チップセットはメディアテックのエントリー5G向け、Dimensity 720です。

 

HANMAR BLADE 5G

この手のマイナーブランドのメーカーがすでに5Gスマートフォンを出していることも驚きですが、eSIMにも対応させています。マイナーメーカーでもeSIM対応モデルを出さなくては消費者に受け入れられない時代がやってきているということなのでしょう。

 

こちらもeSIMが使える

⑤子供用スマートウォッチもeSIM対応へ、My Firstの展示

シンガポールのMy Firstは子供用のスマートウォッチを多数展示していました。同社の製品は日本でも販売されています。子供用のスマートウォッチは大人用とは異なった機能が求められているとのこと。

 

My Fristの子供用スマートウォッチ

Apple Watchなど大人向けのスマートウォッチは、ペアとなるスマートフォンの通知を受けることを主な用途とします。一方子供向けのスマートウォッチは単体利用が基本となり、GPSを内蔵して親のスマートフォンから居場所を確認できる機能が必須です。さらにスマートウォッチにはカメラを内蔵して、常に親とビデオ通話出来たり、緊急時に付近を自動撮影して親に送る機能も登載されます。スマートウォッチにカメラ搭載は子供用モデルでは当たり前なのです。

 

スマートウォッチで撮った写真を親のスマートフォンに転送できる

そのため単体で通信できる4G内蔵モデルを主力製品にしていますが、スマートウォッチを落としたときにSIMトレイが外れてしまいSIMカードを紛失してしまう可能性もあります。そこでMy PhoneはeSIM内蔵の子供用スマートウォッチを現在開発中とのこと。Apple WatchもeSIM内蔵ですが、子供用ウォッチもeSIMになる時代がやってきそうです。

 

eSIM対応機の実機は無くカタログのみ。R2とS3+がeSIM対応だ

⑥ちょっと変わったスマホ?も紹介

BOOXが展示していた「BOOX Palma」はモノクロ電子ペーパーディスプレイを搭載しています。スマートフォンサイズですが実は4Gや5Gには非対応、Wi-Fiのみを搭載します。6.17インチのディスプレイを搭載しており、スマートフォン感覚で電子書籍や電子コミックを読むことができます。電子ブックリーダーはタブレットサイズのものが多いのですが、片手で持ち運ぶにはやや大きいですよね。BOOX Palmaならスマートフォン向けコミックもスマートフォンと同じ感覚で読むことも可能です。スマートフォンとペアで使うことを考えられていますが、昔のアマゾンのSIM内蔵モデルのように、eSIM内蔵で電子書籍も単体でダウンロードできるようなモデルも出してほしいもの。

スマホサイズの電子ブックリーダー「BOOX Palma」

Ulefoneは開発中の縦折り式スマートフォンのモックアップを展示していました。外側には1インチ台の円形ディスプレイも搭載しており、閉じたまま通知などを見ることができます。詳細スペックは不明ですがカメラは1億画素、また5Gに対応します。eSIM対応は不明ですが、来年の発売ということで時期的にも対応するのではないかと思われます。

 

Ulefoneのモックアップ

 

最新の投稿

連載特集

  • 木暮祐一のeSIM奮闘記
  • 山根康宏のワールドeSIMレポート

タグ