ニュース
2023年6月29日

eSIMスマホも展示、アジア最大のIT展示会「COMPUTEX 2023」レポート

2023年5月30日から6月2日まで台湾・台北でCOMPUTEX 2023が開催されました。パソコンメーカーの出展が目立つ中で、スマートフォンやSIM関係など通信に関係した展示も多くみられました。今回はそれらをいくつか紹介します。

①そもそもCOMPUTEXとは?

世界のPC産業の中心地でもある台湾で毎年6月上旬前後に開催されるIT関連の展示会で、規模はアジアで最大、世界で見ても上位に配する一大イベントです。エイサー、ASUS、MSI、ギガバイトなどPCでおなじみのメーカーが大きなブースを構えるほか、最近ではWi-Fi 7や5Gなどネットワーク関連企業の展示も目立っています。日本から片道4時間弱と近いこともあり、台湾観光がてらに取材や商談に訪れる日本人も多くいます。筆者も取材中はルーローファンや小籠包など台湾ならではのローカルグルメを堪能しました。なおCOMPUTEX2023の会場は地下鉄(MRT)の南港展覧館駅に直結、アクセスも容易です。

アジア最大級のIT展示会「COMPUTEX2023」の会場内

②ASUSのポータブルゲームマシン「ROG Ally」と「ROG Phone 7 Ultimate」

COMPUTEX 2023で大きな注目を集めていたのがPCメーカーのASUSの新製品「ROG Ally」です。7インチ画面の左右にゲームパッドを取り付けたポータブルゲーム機で、本体サイズは280mm x 111.38mm、厚さが約21から32mm、重量は608gです。最近このようなゲーム機として日本でも「Steam Deck」が発売され人気ですが、ROG AllyはWindows 11で動作するためWindows向けゲームがそのまま動くのが特徴です。さらにWindowsのアプリも入るためゲーム以外の用途にも使えるのも魅力。YouTube動画を見たりブラウザを使ったり、時にはオフィスアプリで仕事もできてしまうのです。

ASUS ROG Ally

ASUSはゲーミングスマートフォンの「ROG Phone 7 Ultimate」も展示を行いました。ゲーミングスマートフォンとしてハイスペックな性能を誇りますが、大きな特徴は背面に取り付けできる空冷クーラー「AeroActive Cooler 7」の存在です。大型のファンとペルチェ素子により本体背面を冷却するほか、このクーラーを取り付けるとROG Phone 7 Ultimateの背面のドアが開いて、本体内部の冷却版に直接冷気を送風できるのです。これならハイエンドゲームをプレイ中に本体が過熱しません。安心してゲームプレイができるというわけです。

ASUS ROG Phone 7 Ultimate

③インドで売っている折りたたみスマホ「Phantom V Fold」

Tecnoの「Phantom V Fold」は最近話題の折りたたみスマートフォン。Tecnoはインドやアフリカを得意とするメーカーで、このPhantom V Foldも現在インドで販売されています。開くと7.85インチ、閉じると6.42インチの画面が使えます。重量が299gとやや重いのですが、価格は88888ルピー、日本円で約15万5000円と折りたたみスマートフォンとしては安く設定されています。

Tecno Phantom V Fold

④モトローラの衛星通信対応スマホや衛星ビデオ通信のデモ

iPhone 14はアメリカで衛星通信に対応していますが、他のスマートフォンも衛星対応のものがすこしずつ増えています。モトローラの「Defy 2」とCATの「S75」はどちらもメディアテックの衛星通信対応モデムを搭載、緊急時にテキストメッセージを衛星経由で送受信できます。

左がCAT S75、右がモトローラ Defy 2

なおメディアテックは独自イベントを開催して衛星通信のデモも行いました。音声やビデオ通信も可能なシステムを開発中で、実際に衛星通信のエミュレーターと5G経由でビデオ会話をするデモも行いました。海上や山岳地でもいずれ相手を見ながら通話できる時代がやってきそうです。

メディアテックの衛星ビデオ通信のデモ

メディアテックは5Gや4Gの通信モデムも開発していますが、日本のキャリアから販売されているモバイルや固定タイプの5Gルーターも展示していました。

日本向けの5Gルータ

⑤eSIMではなくvSIM内蔵のモバイル5Gルーター

Acerが出展した「Acer Connect ENDURO M3 5G Mobile Wi-Fi」は旅行にうってつけのモバイルルーターです。5Gに対応し6500mAhの大型バッテリーを搭載、複数のスマートフォンやタブレット、ノートPCなどを旅先で接続できます。本体に2.4インチのタッチディスプレイも搭載しているため各種設定も楽に行えます。またvSIMを内蔵しており、本体にnano SIMカードを挿さなくとも各国のデータプランを買うことができます。vSIMはeSIMのようにバーチャルなSIMですが、サーバー側で通信キャリアを切り替えて接続するため専用サイトからプランを選択するだけでデータ通信を行うことができます。年内に発売予定とのことです。

Acer Connect ENDURO M3 5G Mobile Wi-Fi

⑥緊急時にスマホで5G接続できるWi-Fiルーターが便利

今や一家に一台必須のWi-Fiルーターの中にも新しい機能を持った製品が登場します。ASUSの「ASUS ExpertWiFi」は普段は自宅やオフィスの光回線に接続するWi-Fiルーターです。しかし回線のトラブルで光回線が使えないとき、USBケーブルでスマートフォンをつなぐことで、スマートフォンの5G / 4G回線を使ってネット接続が出来るのです。家の中にあるたくさんのスマート家電をWi-Fiルーターにつないでいるとき、光回線が不調になったからと言っていちいちスマートフォンのテザリングにつなぎなおすのは大変ですよね。ネット家電時代ならではの便利な製品でしょう。

ASUS ExpertWiFi

⑦ノートPCも常時接続時代、5G内蔵ThinkPadなどが展示

ギガビットの速度で通信できる5Gをスマートフォンやタブレットだけでではなく、ノートPCでも使用できる製品が増えています。各PCメーカーが5Gモデム内蔵しやすいように、FibocomはノートPC向け5Gモデムモジュールを開発し、レノボ、HP、DELL、エイサー、ASUSなど多くのノートPCに搭載されています。Wi-Fiのない場所でもオンラインゲームからビデオ会議まで、高速通信を可能にしてくれるのです。

Fibocomの5Gカードを搭載するレノボのThinkPad X1 Yoga

⑧合体式や5G eSIM内蔵業務用スマホが登場

COMPUTEXには業務用の端末メーカーも数多く出展していました。Iminのスマートフォン「Swift 1」はNFCを内蔵した端末で、レストランなどでお客さんの支払いをスマートフォンやクレジットカードで受けることができます。また合体式となっておりプリンターモジュールやバーコードリーダーモジュールを提供。その場でレシートの印刷が必要なお店ならプリンターを装着できますし、倉庫の在庫管理を行う企業にはバーコードリーダーを後付けできます。普段はスマートフォンサイズで使える便利な製品と言えるでしょう。

プリンターなどを合体できる業務用モデル

Askeyは開発中の5Gスマートフォンを展示していました。クアルコムのIoT向けチップセットQCM4490搭載というちょっと変わった製品。特筆すべきはSIMカードの構成で、nano SIMカード2枚、またはeSIM 2枚のオプションに対応。業務用スマートフォンだからこそ簡単に通信回線を入れ替えることのできるeSIM対応モデルが必要とされるかもしれません。

eSIM 2枚にも対応するAskeyの5Gスマホ

⑨SIMカードトレイも展示されていた

SIMカード関連ではこんな展示も見かけました。様々な形状のnano SIMやMicro SIMに対応したカードスロットです。IoTデバイスを開発する企業はこのような既存のパーツを使って製品化を進めるわけですね。しかし数年後にはeSIMの普及によりこのようなSIMカードスロットの利用も減っていくかもしれません。

SIMトレイにも様々な形状のものがある

⑩まとめ。IoT時代にeSIMは必須

COMPUTEX 2023ではeSIM関係の展示はまだ多くありませんでしたが、一方ではSIMカードを内蔵しWi-Fiではなく5Gや4G通信を行うデバイスも多くみられました。このような製品が増えるにつれ、eSIMを搭載するモデルも今後増えていくことでしょう。IoT製品向けにeSIMソリューションを提供する企業も出てきているなど、海外のIT展示会ではこれからeSIMに関する展示をより多く見かけることになりそうです。

eSIMに絡んだ展示はこれから増える

最新の投稿

連載特集

  • 木暮祐一のeSIM奮闘記
  • 山根康宏のワールドeSIMレポート

タグ