eSIMスマホも展示、アジア最大のIT展示会「COMPUTEX 2023」レポート
②ASUSのポータブルゲームマシン「ROG Ally」と「ROG Phone 7 Ultimate」
COMPUTEX 2023で大きな注目を集めていたのがPCメーカーのASUSの新製品「ROG Ally」です。7インチ画面の左右にゲームパッドを取り付けたポータブルゲーム機で、本体サイズは280mm x 111.38mm、厚さが約21から32mm、重量は608gです。最近このようなゲーム機として日本でも「Steam Deck」が発売され人気ですが、ROG AllyはWindows 11で動作するためWindows向けゲームがそのまま動くのが特徴です。さらにWindowsのアプリも入るためゲーム以外の用途にも使えるのも魅力。YouTube動画を見たりブラウザを使ったり、時にはオフィスアプリで仕事もできてしまうのです。
ASUSはゲーミングスマートフォンの「ROG Phone 7 Ultimate」も展示を行いました。ゲーミングスマートフォンとしてハイスペックな性能を誇りますが、大きな特徴は背面に取り付けできる空冷クーラー「AeroActive Cooler 7」の存在です。大型のファンとペルチェ素子により本体背面を冷却するほか、このクーラーを取り付けるとROG Phone 7 Ultimateの背面のドアが開いて、本体内部の冷却版に直接冷気を送風できるのです。これならハイエンドゲームをプレイ中に本体が過熱しません。安心してゲームプレイができるというわけです。
③インドで売っている折りたたみスマホ「Phantom V Fold」
Tecnoの「Phantom V Fold」は最近話題の折りたたみスマートフォン。Tecnoはインドやアフリカを得意とするメーカーで、このPhantom V Foldも現在インドで販売されています。開くと7.85インチ、閉じると6.42インチの画面が使えます。重量が299gとやや重いのですが、価格は88888ルピー、日本円で約15万5000円と折りたたみスマートフォンとしては安く設定されています。
④モトローラの衛星通信対応スマホや衛星ビデオ通信のデモ
iPhone 14はアメリカで衛星通信に対応していますが、他のスマートフォンも衛星対応のものがすこしずつ増えています。モトローラの「Defy 2」とCATの「S75」はどちらもメディアテックの衛星通信対応モデムを搭載、緊急時にテキストメッセージを衛星経由で送受信できます。
なおメディアテックは独自イベントを開催して衛星通信のデモも行いました。音声やビデオ通信も可能なシステムを開発中で、実際に衛星通信のエミュレーターと5G経由でビデオ会話をするデモも行いました。海上や山岳地でもいずれ相手を見ながら通話できる時代がやってきそうです。
メディアテックは5Gや4Gの通信モデムも開発していますが、日本のキャリアから販売されているモバイルや固定タイプの5Gルーターも展示していました。
⑤eSIMではなくvSIM内蔵のモバイル5Gルーター
Acerが出展した「Acer Connect ENDURO M3 5G Mobile Wi-Fi」は旅行にうってつけのモバイルルーターです。5Gに対応し6500mAhの大型バッテリーを搭載、複数のスマートフォンやタブレット、ノートPCなどを旅先で接続できます。本体に2.4インチのタッチディスプレイも搭載しているため各種設定も楽に行えます。またvSIMを内蔵しており、本体にnano SIMカードを挿さなくとも各国のデータプランを買うことができます。vSIMはeSIMのようにバーチャルなSIMですが、サーバー側で通信キャリアを切り替えて接続するため専用サイトからプランを選択するだけでデータ通信を行うことができます。年内に発売予定とのことです。
⑥緊急時にスマホで5G接続できるWi-Fiルーターが便利
今や一家に一台必須のWi-Fiルーターの中にも新しい機能を持った製品が登場します。ASUSの「ASUS ExpertWiFi」は普段は自宅やオフィスの光回線に接続するWi-Fiルーターです。しかし回線のトラブルで光回線が使えないとき、USBケーブルでスマートフォンをつなぐことで、スマートフォンの5G / 4G回線を使ってネット接続が出来るのです。家の中にあるたくさんのスマート家電をWi-Fiルーターにつないでいるとき、光回線が不調になったからと言っていちいちスマートフォンのテザリングにつなぎなおすのは大変ですよね。ネット家電時代ならではの便利な製品でしょう。
⑦ノートPCも常時接続時代、5G内蔵ThinkPadなどが展示
ギガビットの速度で通信できる5Gをスマートフォンやタブレットだけでではなく、ノートPCでも使用できる製品が増えています。各PCメーカーが5Gモデムを内蔵しやすいように、FibocomはノートPC向け5Gモデムモジュールを開発し、レノボ、HP、DELL、エイサー、ASUSなど多くのノートPCに搭載されています。Wi-Fiのない場所でもオンラインゲームからビデオ会議まで、高速通信を可能にしてくれるのです。
⑧合体式や5G eSIM内蔵業務用スマホが登場
COMPUTEXには業務用の端末メーカーも数多く出展していました。Iminのスマートフォン「Swift 1」はNFCを内蔵した端末で、レストランなどでお客さんの支払いをスマートフォンやクレジットカードで受けることができます。また合体式となっておりプリンターモジュールやバーコードリーダーモジュールを提供。その場でレシートの印刷が必要なお店ならプリンターを装着できますし、倉庫の在庫管理を行う企業にはバーコードリーダーを後付けできます。普段はスマートフォンサイズで使える便利な製品と言えるでしょう。
Askeyは開発中の5Gスマートフォンを展示していました。クアルコムのIoT向けチップセットQCM4490搭載というちょっと変わった製品。特筆すべきはSIMカードの構成で、nano SIMカード2枚、またはeSIM 2枚のオプションに対応。業務用スマートフォンだからこそ簡単に通信回線を入れ替えることのできるeSIM対応モデルが必要とされるかもしれません。
⑨SIMカードトレイも展示されていた
SIMカード関連ではこんな展示も見かけました。様々な形状のnano SIMやMicro SIMに対応したカードスロットです。IoTデバイスを開発する企業はこのような既存のパーツを使って製品化を進めるわけですね。しかし数年後にはeSIMの普及によりこのようなSIMカードスロットの利用も減っていくかもしれません。
⑩まとめ。IoT時代にeSIMは必須
COMPUTEX 2023ではeSIM関係の展示はまだ多くありませんでしたが、一方ではSIMカードを内蔵しWi-Fiではなく5Gや4G通信を行うデバイスも多くみられました。このような製品が増えるにつれ、eSIMを搭載するモデルも今後増えていくことでしょう。IoT製品向けにeSIMソリューションを提供する企業も出てきているなど、海外のIT展示会ではこれからeSIMに関する展示をより多く見かけることになりそうです。
香港在住の携帯電話研究家。海外(特に中国)のスマートフォンや通信事情に精通。IoT、スマートシティー、MaaS、インダストリアルデザインなど活動の幅は広い。最新機種のみならずジャンク品から百万円のラグジュアリーモデルまであらゆる携帯電話・スマートフォンを購入する収集家でもあり、その数はまもなく1800台に達する。