スマホカメラの最高峰、ファーウェイの「Pura 80 Ultra」がすごい
日本ではすっかりスマートウォッチのメーカーとしての存在感が目立つファーウェイですが、海外ではものすごいカメラを搭載したスマートフォンを販売しています。望遠カメラに世界初の機能を搭載し、しかも背面デザインは一度見たら忘れられないような形状。中国をはじめアジア各国やヨーロッパで販売中の「Pura 80 Ultra」をバンコクで行われた発表会で触ってきました。
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トライアングルデザインが特徴のPura 80 Ultra
ファーウェイPura 80 Ultraはファーウェイのスマートフォンの中でも最上位に位置する製品です。ファーウェイは世界初の三つ折り型スマートフォン「Mate XT Ultimate Design」という高価格なモデルも出していますが、一般ユーザー向けの製品とは言えません。Pura 80 Ultraは6.8インチディスプレイを搭載する高性能なスマートフォンであり、中国ではもっとも注目を集めているモデルと言われています。
ファーウエイは今でもアメリカ政府の制裁を受けている状況であり、Pura 80 Ultraが搭載するチップセットは非公開という特殊な事情のモデルとして登場しました。調査会社などの情報によると、HiSilicon製造のKirin 9020というモデルを搭載していると言われています。このチップセットは7nm(ナノマイクロ)プロセスで製造されていますが、チップセットの世代としては数世代遅れたものになっています。しかし本体の動作は一般的なアプリを使う分には他社製品に劣ることはなく、カメラ性能はむしろ業界トップクラスと言われています。
6.8インチディスプレイを搭載、チップセットは非公開
本体サイズは163.0 x 76.1 x 8.3mmで重量は233.5g。この本体の内部に中国モデルは5700mAh、今回テストしたグローバルモデルは5170mAhのバッテリーを内蔵します。バッテリーの充電速度は100Wに対応、ワイヤレス充電でも80Wと高速であり、バッテリー周りの性能はフラッグシップモデルに相応しいものになっています。
バッテリー性能は高い
カラーバリエーションはラグジュアリーな輝きを放つゴールドと、落ち着きのあるブラックの2色。特にゴールドモデルは背面が鏡のように磨き上げられ、手にするたびに上質な輝きを楽しめます。3つのカメラを三角形の頂点に配した独創的な「トライアングルデザイン」は、一目でファーウェイのカメラフォンとわかる存在感を放っています。
鏡面仕上げのゴールドモデル。撮影しているスマホが写り込んでいる
ちなみに中国の価格は9999元=約20万6000円、タイでは49990バーツ=約22万8000円。高性能かつ高価格なモデルだけに、純正ケースも様々なものが販売されます。写真の「クラウドレザー調」ケースはチェスターフィールド風デザインで、クッション製もある触り心地の良いケース。他にもプリントレザー調ケースや、ゲーミング用途に向いたマイクロポンプを内蔵する液冷ケースなどが販売されます。
高級感あるケースも登場
高性能なカメラは世界初のデュアル望遠も搭載
ファーウェイのスマートフォンが日本で登場したのは2019年秋なので、もう6年も前のことになります。そのためファーウェイのスマートフォンの印象を覚えている人も減っていると思いますが、全盛期は市場でも最高のカメラを搭載するモデルを次々と出していました。Pura 80 Ultraは以前は「P」シリーズとして出ていたモデルであり、カメラ性能も群を抜いています。
Pura 80 Ultraのカメラは5000万画素の広角、4000万画素の超広角、5000万画素の3.7倍+9.4倍デュアル望遠の3つを搭載しています。
広角カメラは業界でも最大クラスの1インチRYYBセンサーを搭載、物理的に絞りを調整できる可変絞りを搭載し、f/1.6からf/4.0まで被写界深度やボケを自在にコントロールできます。ダイナミックレンジは16ステップと業界最高クラスであり、明暗差の大きいシーンも得意とします。超広角カメラは風景やVlog撮影時に広い画角が必要な時に威力を発揮します。
高性能なトリプルカメラを搭載。こちらはブラックモデルだ
望遠カメラはトリッキーというか、世界初のデュアル望遠システムとなっています。これはプリズムがモーター駆動で2段階に動作するもので、3.7倍と9.4倍の2つの焦点距離を1つのセンサーでカバー。一般的にはそれぞれの望遠に対して2つのセンサーが必要ですが、Pura 80 Ultraはこの世界初の機構の搭載でコンパクトなスペースに2つの望遠カメラを収めることに成功しています。
発表会で示されたデュアルペリスコープシステムの動作原理
望遠カメラ部分を見ると、1つのレンズカバーの中に、2つのレンズが見えます。なお3.7倍で撮影時は5000万画素、9.4倍で撮影時は1200万画素となります。
右側の望遠カメラ部分は2つのレンズが見える
カメラのユーザーインターフェースを見ると、標準のカメラモードでは倍率の切り替えはワイド、1倍、2倍、4倍、10倍と切りのいい倍率になっています。またデジタルでは最大100倍までに対応、AI補正により100倍でもSNSにアップする程度ならば十分な画質が得られるといいます。実際に使ってみましたが100倍ではさすがに被写体を画面内に収めるのが難しく文字などはAIでかなり加工されてしまうため、30倍や50倍程度が実用的な倍率だと感じました。
カメラのユーザーインターフェース
AIカメラで高倍率望遠もスゴイ
実際の作例を簡単に3枚だけ掲載します。撮影日は曇天かつ小雨が降ったりやんだりという状況だったため全体的にやや落ち着いた光の撮影状況でした。しかし1倍での撮影では緑の色もしっかり映える表現であり、空も雲の濃淡をうまく写しています。
標準撮影
10倍望遠でも細かいディテールをつぶさずにうまく写しています。全体的に雨水によるしずる感も出ているのではないでしょうか。ライトの表現も見事です。
10倍撮影
デジタル30倍で写してみました。30倍ならPura 80 Ultraの画面を見ながら撮影シーンを的確に追いかけることができ、十分常用できる倍率です。文字がややつぶれているのはAI処理によるもので、この辺りが高倍率望遠の若干苦手な部分かもしれません。一方では樹木の表現はのっぺり感もなくいい感じです。
30倍撮影
アジアモデルはグーグルにも対応、日本未発売が残念
Pura 80 UltraのOSはグローバルモデルはAndroid 12ベースのEMUI 15を搭載。チップセット性能が若干低くとも動作にストレスが少ないのはOSの出来がいいからでしょうか。なお中国モデルはファーウェイ開発のHarmonyOS 5.1が搭載されます。OSは異なりますが、アイコンや細かい動作などは一部で共通化されています。
EMUIを搭載する
グローバルモデルのEMUIはグーグルアプリ(GMS)をインストールが可能で、プレイストアからSNSアプリなどのインストールも可能です。ただしグーグル公式ではなくファーウェイのアプリストアからGMS動作用のアプリをインストールしたうえでの利用となります。そのため一部動かないアプリもありますが、一般的に使う分には大多数のアプリが利用できる用です。
SNSアプリもインストールできる
Pura 80 Ultraの日本発売予定はありません。キャリア販売が主流の日本の現状では、今のファーウェイのスマートフォンを投入することはかなり難しいでしょう。とはいえここまで性能の良いカメラフォンが日本で使えないのは残念なことです。ファーウェイは日本でAVやスポーツ関連のイベントにスマートウォッチやワイヤレスヘッドフォンを出展することがありますが、そのような場でぜひPura 80 Ultraも参考として見せてほしいものです。
日本でも機会があればぜひ製品を見せてほしい
香港在住の携帯電話研究家。海外(特に中国)のスマートフォンや通信事情に精通。IoT、スマートシティー、MaaS、インダストリアルデザインなど活動の幅は広い。最新機種のみならずジャンク品から百万円のラグジュアリーモデルまであらゆる携帯電話・スマートフォンを購入する収集家でもあり、その数はまもなく1800台に達する。