山根康宏のワールドeSIMレポート
2024年7月8日

1ドル台から買える多彩な料金が魅力、中国用の新たなeSIMを上海で使ってみた

中国でスマートフォンを使う場合、日本のスマートフォンを持ち込んで国際ローミングサービスを使うことが一般的でしょう。中国はいわゆる「壁越え」が必要で、中国国内キャリアのSIMカードを購入しても、LINEやインスタグラムなど海外系のSNSが使えません。一方、国際ローミングサービスなら海外SNSもそのまま使えるため、ローミングサービスが広く使われているのです。今回はBillion Connectという海外SIMプロバイダの中国用eSIMを試してみました。スマートフォンは日本で購入したiPhone 12 miniです。

China Unicom Hong Kongの中国向けeSIMが販売終了

中国向けのプリペイドSIMカードは香港キャリアの製品が多数販売されており、日本のアマゾンでも購入できます。中でもChina Mobile Hong Kong(中国移動香港)やChina Unicom Hong Kong(中国聯通香港)の製品がよく知られています。この2キャリアのうちChina Unicom Hong Kongは世界各国のプリペイドSIMカードを出しており、eSIMも販売しています。本連載でも過去に同社の中国向けeSIMを使った記事を書きました。

「壁越え」必須の中国用eSIMは事前オンライン購入がお勧め

ところが現在、China Unicom Hong Kongの中国向けeSIMは販売が終了されてしまい、物理SIMカードのみの販売となってしまいました。同社はアジアやヨーロッパ向けのeSIMは引き続き販売しているのですが、中国に行く人にとっては不便になってしまったのです。

もちろんアマゾンなどで物理SIMカードを買えばいいのでしょうが、eSIMならば郵送物を受け取る手間も省けますし、出発当日や中国に到着後でもオンラインで購入することが可能です。そこでネット上で販売されている中国向けのeSIMを色々探したところ、細かい料金プランが選択できるBillion ConnectのeSIMを見つけたので購入、上海で使ってみました。

1日200円台から買えるBillion ConnectのeSIM

Billion ConnectはeSIMと物理SIMカードの両方を扱うSIMプロバイダです。世界各国及び地域ごとのパッケージが多数用意されています。WEBページやアプリは日本語はないものの難しい英語ではないため購入の敷居は比較的低いと思われます。

 

Billion Connect

WEBページから各国のSIMカードを検索してみました。検索窓に「China」と入力してみると、しっかりと「eSIM」「SIM Card」と2つの情報が表示されます。中国向けもeSIMがしっかり販売されているわけです。Billion Connectのように世界各国のeSIMを販売しているプロバイダは多いものの、料金が高いものもみかけます。Billion Connectは検索して出てきた結果に「Chna eSIM Starting from USD 1.53」とあるように、最安値は200円台からeSIMが購入できます。

 

中国向けのeSIMも販売

料金体系は細かく分かれています。まず1日あたりの容量を決めるプラン「Daypass」は、500MB、1GB、2GB、3GBの1日あたりの使用量を決め、次に利用日数を1日から30日の間から選ぶと料金が確定します。一方「Fixed Bundle」プランは一般的なプリペイドSIMのように、3GB、5GB、10GB、15GB、20GBの容量を決め、その次に利用日数を決めるものです。

最低料金の1.53ドルは、Daypassで「1日500MB、1日間」の料金です。実際の渡航では数日滞在するでしょうから、試しにDaypassで「1日500MB、5日間」を検索すると3.68ドル(約600円)、「1日1GB、5日間」なら5.38ドル(約870円)でした。また「5日間で合計5GB」をFixed Bundleで選ぶと5.60ドル(約910円)となります。

 

細かく料金を選べるのが魅力

どのプランがいいかどうかは使い方によります。オーソドックスにFixed Bundleで滞在日数期間の合計ギガ数を決めるのが簡単です。一方毎日使う時間が決まっているなど、1日あたりの利用量がある程度見えるのならばDaypassもよさそうです。

アプリかららくらく購入

今回は1日の利用日数しかなかったため、最低日数で買ってみることにしました。Billion Connectのアプリをインストール後、最初に画面下部のメニューの「Account」からユーザー登録を行います。

 

アプリのユーザー登録を済ます

ユーザー登録完了後、あらためてアプリのホーム画面の検索窓に「China」と入力、結果ページの上から「eSIM」をタップ、続いて「China」をタップします。するとPCの画面同様にDaypassとFixed Bundleの選択、さらに容量や日数の選択画面が表示されます。

 

アプリから「eSIM」「China」を選択

今回は2GB/日、1日を選択しました。チェックアウト後は指示に従いクレジットカードで購入を進めます。なおクレジットカードはアプリへの登録が必要です。画面を全部紹介すると長くなってしまうので、下の図ではポイントとなる画面だけを表示します。購入完了後は「Check Order」をタップします。

 

プランを選んだらチェックアウトに進む。途中カード購入のための登録などを済ませる。購入が完了すれば「Payment Successful」の表示となる

Check Orderをタップした画面を見ると、購入直後は画面上部に「Generating」と表示されます。これはeSIMを発行している作業中という意味です。アプリのホーム画面に戻って画面下の「My Order」をタップしてMy Order画面を何度か確認し、上部の14桁のオーダー番号の右側が「Generating」でしたら引き続き作業中、「Generated」に変わればeSIMの発行が完了となります。今回は2分ほどでGeneratedに変わりました。

 

購入直後の画面は「Generating」と表示。My Orderから確認して「Generated」と表示されればeSIMの発行が完了している

「eSIM Instructions」を開いた後にQRコードを表示し、これをスマートフォンに読み込ませればeSIMの導入は完了です。eSIMインストール中に「CMHKからの新規eSIM..」の表示が出ることからわかるように、このeSIMの回線はChina Mobile Hong Kongのものでした。

 

手順に従ってQRコードからインストール。中身は香港キャリアの回線だ

インストール後はiPhoneの場合は「旅行」などわかりにくい名前になっているので、今回も発行元の「Billion」に名前を付けなおしました。そしてeSIMをタップしてデータローミングをONにします。Wi-Fiを切ればアンテナピクト部分の横に「4G」または「5G」の文字が表示され、データ通信が始まったことがわかります。なお説明では中国では4G回線しか利用できないようでしたが、現地では5Gにつながっていました。

 

iPhoneのeSIMの名前はわかりにくいので変更、データローミングをONにする

上海各地で100Mbps、5Gで快適接続

さっそく上海各地で使ってみます。といっても今回は1日だけ、しかも雨模様だったためあまり移動は出来ませんでした。まずは繁華街である南京東路。ここでは下りが101Mbps、上りが92.6Mbpsでした。5Gとしては遅いかもしれませんが、4Gでは下りはこの半分程度。また上りが100Mbps近く出るのは5G接続の魅力です。4Gでは上りは10-30Mbps程度です。

 

南京東路で100Mbps

こちらは上海浦東空港と市内南部を結ぶ上海リニアの龍陽路駅のホームです。上りは若干遅めですが十分な速度でした。なお香港キャリアの回線なのでもちろん海外SNSサービスはそのまま使えます。

 

リニアホームでも同等の速度

そして帰りの上海浦東空港のターミナル内。下りは他の場所と同等の100Mbps前後でしたが、上りは10Mbps前後。何度か測定したのですが変わらずでした。

 

浦東空港では上りの速度が出なかった

日本からのローミングとの比較とまとめ

Billion Connectと日本のローミングとの料金をざっくりと比べてみます。まずドコモの世界そのままギガは、自分の日本で使っている「ギガ」をそのまま海外で使えるサービス。容量プランではなく日数で料金が変わります。24時間980円と短期滞在向けから1日単位で30日まで料金が用意されています。今回のような短期滞在の場合では、24時間が980円、2日間が1780円、3日間が2480円です。

Billion Connectは3GB/日が1日で2.35ドル(約380円)、2日4.76ドル(約770円)、3日6.14ドル(約990円)です。Flex Bundleは3日間10GBで7.58ドル(約1220円)。容量上限はあるものの、全般的に世界そのままギガより割安に感じます。

一方、ahamoの場合は20GB / 15日、月額2970円です。Billion Connectは20GB / 15日で21.68ドル(約3500円)。Billion Connectが若干高いもののいい勝負です。しかもBillion Connectなら追加でギガが買えます(ahamoは海外ギガ追加NG、15日以降は日本に帰国して日本の電波を拾うまで速度規制、実質低速で使えない)。そしてBillion Connectなら20GB / 30日、22.28ドル(約3600円)というプランもあります。

このようにBillion Connectは短期間はだいぶ安く、長期間や高容量でも日本のサービスに負けない料金であると思えます。ただしアプリからデータ残量を調べることができず、スマートフォンの設定画面から概算の使用量を確認するしか方法が無いのが唯一残念な点でした。中国に行かれる方は一度試してみてはいかがでしょうか?

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