オランダで現地MVNOのeSIMを購入してみた
eSIMの販売は国によって状況が大きく異なります。
今回訪問したのはオランダのアムステルダム。現地では大手キャリア(MNO)はプリペイドのeSIMを販売しておらず、MVNOキャリアのeSIMを購入して使ってみました。通信速度は高速ながら、データ料金にはやや不満の残る結果でした。
なおスマートフォンは日本発売のiPhone 12 miniを使ってテストしています。
目次
スキポール空港でもeSIMを販売
オランダの空の玄関口、スキポール空港に到着するとさっそく「L-mobi」というキャリアの広告が目に入ってきます。eSIMの表記もあるように、オランダでもeSIMの認知度はだいぶ高まっているようです。
スキポール空港はオランダ国鉄の駅とも直結しており、空港を出るとそこは駅の構内。そこにもL-mobiは早朝から簡易的なスタンドを出しており、その場でeSIMを買うことができます。
今回は空港・駅構内を探索するためにL-mobiのカウンターには立ち寄らず、構内の無料Wi-Fiを使いながら少し歩き回ってみました。
30分ほどしてカウンターに戻ると、先ほどまでは人がいなかったのに今度は10名くらいのお客さんが囲っている状況。そのためここでの購入は断念することにしました。
さて空港&駅構内にはプリペイドSIMカードを販売するお店もいくつかありました。一方では他のヨーロッパの都市のように、大手キャリアのカウンターは見当たりません。
ちなみにオランダでは地元のKPNと、ヨーロッパ大手のT-Mobile、Vodafoneの3社が通信事業を行っています。
IT関連の家電店ではeSIMはなくプリペイドSIMカードのみを販売。Vodafoneオランダとヨーロッパ各国でMVNOを展開しているLEBARAのものを販売。価格はざっくりと10GBで40ユーロ(約6,500円)、ちょっと高いですね。
今回はeSIMの購入ですから、店舗に行く必要はありません。そこでスマートフォンから直接eSIMを買うことにしました。とはいえ大手キャリア3社のホームページを見るとプリペイドSIMカードはあるものの、eSIMのプリペイドはありません。
調べてみるとMVNOのSimyoがeSIMを販売しているので購入してみました。
スマホから買えるSimyoのプリペイドeSIM
SimyoはKPNの回線を使うMVNOなので回線品質も問題なさそうです。ホームページを開き「eSIM」「プリペイド」を選ぶとすぐに料金も見ることができます。
Simyoのホームページはこちらから
またデータ料金は従量制とパッケージがあります。
eSIMの料金とデータ料金をまとめると以下になります。
eSIM販売価格
5ユーロ(約800円):7.5ユーロ料金込み
15ユーロ(約2,500円):22.5ユーロ料金込み
25ユーロ(約4,100円):35ユーロ料金込み
データ料金
従量制:0.15ユーロ / MB(約24円)
150MB:5ユーロ(約800円)
500MB:7.5ユーロ(約1,200円)
1000MB:10ユーロ(約1,600円)
2000MB:12.5ユーロ(約2,000円)
低速定額:10ユーロ(約1,600円)
各容量のデータプランを買わないと従量料金になり、あっという間にプリペイドeSIMに含まれている料金を使い果たしてしまうので、150MBからのそれぞれのデータプランのどれかを買うのが鉄則となります。
また10ユーロで定額使い放題になりますが、通信速度は保証されません。なお今回は1000MB=約1GBを買うことにしました。
スマートフォンからSimyoのホームページにアクセスすると、購入画面はオランダ語のみでした。翻訳作業のやりやすさを考えると、あらかじめ出発前に日本でパソコンからアクセスしたほうがいいかもしれません。
以下はiPhone 12 miniでの実際の操作画面です。なお念のため、日本のSIMカードを入れていた場合は抜いていた方がいいでしょう。また今回はスキポール空港で作業を行いましたが、空港の無料Wi-Fiに接続してください。
Simyoのホームページから「Menu」を選び、一覧にある「Prepaid」をタップすると「Prepaid bestellen」の緑の枠が出るのでそこをタップします。ちなみにbestellenはオランダ語で「注文」です。
これ以降は基本的に緑をタップ、入力不足などの時は先に進めずエラー部分を指示してくれます。
画面を下にスワイプすると、料金一覧が出るので、今回は「22.5ユーロ(販売額15ユーロ)をタップして選択。なおさらに下にスクロールするとデータ料金一覧も表示されます。続けるには一番下の「Bestellen」をタップ。
次の画面ではeSIMを選びます。すると下に枠があり、スマートフォンメーカーと機種名を選択する画面になります。
Androidスマートフォンの場合は種類が多いので、もしも自分の機種がここになくとも、自分の機種がeSIM対応なら適当なものを選んでも問題ないと思われます。
そして「Verder」(さらに)をタップします。
次の画面は「eSIMは15分ほどで届く」との案内。
さらに下にスクロールするとぱっと見てもわかりにくい画面なので、翻訳すると番号を維持するかどうかでした。既存のSIMカード客かどうかということです。
ここは新規にeSIM購入なので上の方を選び、Verderタップで続けます。
次の画面がちょっと難関でした。eSIMの購入には個人情報登録が必要ですが、氏名と誕生日のほかに、住所が必要です。住所はホテルにしたのですが、郵便番号や番地をホテル予約サイトから確認しておく必要があります。
最後に支払い画面。クレジットカードを選び、カード名のところをタップするとVisaとMasterが選べます。その下の確認をタップ、次の画面でカード情報を入力すれば、購入完了です。
アプリからデータプランを購入
eSIM購入後、メールを確認すると、3通のメールが5分以内に届きました。「15分でeSIM発行」がきちんと行われています。なお電話番号は06からはじまる10桁の番号です。
9:05 「ようこそ」のメール
9:10 電話番号の通知
9:10 パスワードの通知
さてこのあとはアプリストアからSimyoのアプリをダウンロードして開きます。
ログイン画面が出るので受領した電話番号をパスワードを入れてログインします。すると自分の名前がちゃんと表示されます。続いてeSIMのインストールを選びます。
QRコードなどを読む必要はなく、アプリから直接インストールできます。
SIMカードを念のため抜く画面が表示され、続けていくと自動的にeSIMがインストールされます。
確認表示の後、あらためてアプリにログイン。パスワードに代わる5桁の暗証番号を設定します。これ以降はパスワードが不要でこの暗証番号を使ってログインできます。
確認出来たら、スマートフォンの設定を開いてeSIMを確認します。iPhoneの場合は勝手に名前がつけられるので(今回は「個人」)、わかりやすい名前に変えておくといいでしょう。
なおオランダ国内でのみ使う場合はデータローミングはオンにする必要はありません。
アプリに戻ると、購入した22.5ユーロが課金されていることがわかります。
画面左下の「Internetbundel kopen」をタップすると、データプランが出てきます。ここで今回は1000MB 10ユーロを選択。すると残高が10ユーロ減り、12.5ユーロになります。
ここまで済めば、ようやくスマートフォンのWi-Fiをオフにして、データ通信を使うことができます。
4Gながら速度は満足、データ使用にやや不安
さっそくスキポール空港で速度チェックを行います。下り160Mbps程度と十分な速度でした。4G接続のみですがこれなら快適につかうことができます。
アムステルダム市内でも繁華街は150-200Mbpsと十分な速度が出ました。回線状況は良好です。
ただし使っていて若干不便さを感じました。
アプリのほうでデータ残量が確認できるのですが、反映されるのが遅く、しばらく使ってアプリを開いても1000MBの残量が減っていませんでした。そこで設定画面の残量を目安にしながら使っていました。ところがもうすぐ1000MBという情況でアプリを開くと、元々あった課金分が減っており、また1000MBのグラフを見るとまだ残量があるように見えます。グラフのオレンジの部分はもしかしたら1GBを超えてしまった分で、その分が従量課金で残高から引かれていった、ということなのかもしれません。
スマートフォンのデータ使用量はおおざっぱなので多少誤差はあるかもしれませんが、アプリのほうがリアルタイムで残高表示できないのは不便です。
日本からのローミングとの比較とまとめ
このことから、今回のように22.5ユーロ残高があるのであれば、1000MB(10ユーロ)と2000MB(20ユーロ)を購入してしまい、残高ゼロにするほうがいいのでしょう。この辺りは気を使いながら使わなくてはならないと思います。
さて日本からのローミングを比較すると、ドコモの場合は世界そのままギガが3日間2,480円。また5日間で3,980円です。Simyoは今回買った15ユーロが約2,500円で3GB(22.5ユーロ分)、25ユーロなら約4,100円で5GB(35ユーロ分)使えます。
単純に料金だけを比較するとドコモのローミングのほうが有利です。ただしSimyoはオランダの電話番号がもてますし、有効期限は12カ月です。現地番号を使った通話をする、といった用途ならSimyoにもメリットがあるでしょう。
SimyoのeSIMは支払った料金以上の残高が買えるのは便利な一方で、データ料金に従量制があるためパッケージを別途購入しなくてはならないのがやや面倒と言えます。「15ユーロで5GB」のような、わかりやすい料金体系にしてほしいなと感じました。
香港在住の携帯電話研究家。海外(特に中国)のスマートフォンや通信事情に精通。IoT、スマートシティー、MaaS、インダストリアルデザインなど活動の幅は広い。最新機種のみならずジャンク品から百万円のラグジュアリーモデルまであらゆる携帯電話・スマートフォンを購入する収集家でもあり、その数はまもなく1800台に達する。