1日単位で無駄なく買えるHISの世界対応eSIM「Trip SIM」を韓国で使ってみた
旅行代理店として知られているHISは、HIS Mobileの名前で通信サービスも提供しています。同社の海外旅行者向けに特化したサービスがTrip SIM。日本企業が提供しているので日本人にも安心して使えるeSIMの1つと言えるでしょう。今回は韓国でTrip SiMを使ってみました。
目次
①細かい料金が魅力の「Trip SIM」
Trip SIMは世界120か国以上で使えるeSIMです。日本人に人気の渡航先はほぼすべてカバーされていると言えるでしょう。また国ごとのeSIMの他に「アジア16か国」「ヨーロッパ33か国」「中国&マカオ&香港」「中東4か国」などなど、実際に旅行者が周遊するであろうパターンのエリア向け周遊eSIMも提供。このあたりは旅行代理店であるHISならではの製品ラインナップと言えます。
Trip SIMの最大の利点は利用期限を1日単位で購入できることです。一般的なeSIMは有効期限が3日、5日、10日のようにおおざっぱであり、自分が渡航する日数が合致しないときはそれより長い期間のeSIMを買う必要があります。たとえば20日間の長期旅行の際、eSIMを買おうと思ったら15日間の上は30日間しかなかった、ということはよくあるでしょう。
Trip SIMのeSIMは国、エリアによって料金プランの形式がいくつかあります。
(1)毎日プラン:「1日あたりのGB」+「1日ずつ日数選択」
(2)データ無制限プラン
(3)固定プラン:「決まった日数、利用可能データ数固定」
このうち(3)は前述したように、多くのeSIMに見られる「XXX国5日間10GB」などのプランです。たとえば台湾やタイ、シンガポールなどが日数とデータ数固定プランです。
それに対して多くの国のプランは(1)となっています。たとえばアメリカ(ハワイ)はまず「1日500MB」「1日1GB」「1日2GB」を選んだうえで、必要日数を購入します。つまり1日あたり使えるGB数の上限が決まっており、それを購入した日数分使えるというわけ。1日のGB数に達すると、それ以降は低速になりますがそのまま使うこともできます。グアム、ヨーロッパ各国、香港、中国、マレーシア、オーストラリアなどがこの料金体系です。
なお韓国は(2)と(3)のハイブリッドとも言える料金体系で、毎日プランとデータ無制限プランの2種類が混在します。低利用なら毎日プラン、K-POPの動画を見まくったりライブ配信を毎日行うなら無制限プラン、のように目的に応じて選ぶとよいでしょう。
購入したeSIMにはそれぞれ有効日数があります。有効日数はeSIMによって異なり30日、60日、90日などがあります(商品ページに記載)。購入後はその期間内に使い始める必要があり、それを超えると失効してしまいます。なお海外渡航前に日本でeSIMを購入しインストールを済ませても、現地の電波を拾うまでは日数はカウントされません。ただし「アジア30カ国」だけはインストールした日から有効期限がカウントされるので注意が必要です。
それぞれのeSIMは必要日数単位で購入できますが、1日の単位は現地時間ではなく日本時間となります。またプランに【ND】の記載があるものは、1日が切り替わるのが日本時間の23時になります。
②韓国で5G対応、現地eSIMよりメリット大
今回はTrip SIMを韓国で使ってみました。Trip SIMを韓国で使う大きなメリットは5G通信に対応していること。実は韓国で購入できる韓国キャリアのeSIM / SIMカードは4Gにしか対応しておらず、超高速通信を利用できません。
韓国キャリアの4G eSIMの記事はこちら。
Trip SIMなら5Gの高速通信速度が利用できるのです。ただし5G速度を利用できるのはGB数を決めるプランのみ。無制限のプランは低速と記載されており、おそらく4Gの低速しか利用できません。速度は日本のMVNOの低速なプラン同等の速度だと思われます。また無制限プランはGB数プランより割高です。Trip SIMを韓国で使う場合は無制限プランは「事前に日本で購入できる」くらいしかメリットはないかもしません。
韓国用eSIMの料金を比較すると、5G速度の毎日プラン1GBと、低速で無制限プランではかなりの差があります。韓国で無制限を使いたいのであれば、現地で買える韓国キャリアのeSIMのほうがいいでしょう。
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・毎日プラン1GB 1日間:899円 / 無制限1日:2,657円
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・毎日プラン1GB 3日間:1,486円 / 無制限3日:7,243円
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・毎日プラン1GB 5日間:2,068円 / 無制限5日:11,064円
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・毎日プラン1GB 10日間:3,524円 / 無制限10日:15,489円
③Trip SIMをソウルで使ってみる
それでは実際にTrip SIMを購入して韓国で使ってみます。iPhoneから直接Trip SIMのページにアクセスします。今回は毎日プランの3GBで、3日間を購入します。画面から順にプランを選んでいきます。会員にならず非会員のまま購入も可能です。
Trip SIM:https://hisesim.kimochiesim.com/
購入が完了後、10分ほどでメールが届き、QRコードと設定用のアクティベーションコード「SM-DP+アドレス」「アクティベーションコード」が届きます。
今回はeSIMのインストールをQRコードではなくアクティベーションコードから行ってみます。iPhoneの設定画面から「モバイル通信」→SIM一覧の一番下の「eSIMを追加」→モバイル通信を設定から「QRコードを使用」→QRコードスキャン画面の一番下の「詳細情報を手動で入力」と進みます。そしてアクティベーションコードを入力画面でメールで届いた「SM-DP+アドレス」「アクティベーションコード」を入力します。
なおメールから「SM-DP+アドレス」をコピーすると、コードの頭に勝手にhttps://が付与されてしまいます。メールから「SM-DP+アドレス」をコピペする際は注意してください。
続けて進めていくと「…中華電信からのeSIMをアクティベート…」という表示が出ます。このことからTrip SIMの韓国プランは、実は台湾の中華電信のeSIMサービスを使っていることがわかります。設定が終われば(今回は)「副回線」という名前でeSIMがインストールされたので、わかりやすいように名前を「HIS」などに変えておいた方がいいでしょう。最後にインストールしたeSIMをタップして、データローミングをONにします。
では実際にソウル市内で使ってみました。速度を計ったのはミョンドン、カンナム、東大門、ホンデなど主要な繁華街。速度はどのエリアでも300Mbps弱でした。5G接続であれば500Mbps程度出ると思ったのですが、Trip SIMそのものが前述したように台湾キャリアのローミングサービスであることから、(キャリア間の契約で)速度は最大300Mbpsに抑えられているのかもしれません。とはいえこれだけの速度が出てくれれば快適に使えます。
5Gの速度もまあまあ快適で無駄なく購入できるTrip SIMですが、専用アプリはありません。そのためデータ使用量の確認はiPhoneの設定画面のモバイルデータ量からの概算となります。ここに表示されるデータ使用量はスマートフォンのOSがアプリのデータ通信から計測しているため、キャリア側に記録される正確なデータ量と若干の誤差があるのです。とはいえTrip SIMはデータ上限に達しても低速で通信はできるので、大まかな通信量がわかれば十分と言えるでしょう。
それでは速度制限がかかるとどれくらいの速度で通信できるのでしょうか。1日の上限である3GBを超えたところ、速度4Mbps前後とかなり低下しました。今回のeSIMはテザリングも利用できますが、3MbpsではノートPCからの接続もだいぶ遅くなります。
④日本からのローミングとの比較
Trip SIMと日本のローミング料金を比較してみます。ドコモの世界そのままギガは24時間980円、3日間2,480円、5日間3,980円です。Trip SIMは毎日1GBプランがそれぞれ899円、1,480円、2,068円。毎日2GBプランで1,270円、2,225円、3,183円。毎日3GBプランで1,832円、3,350円、4,870円。1日2GB以下で2日以上ならTrip SIMのほうが割安です。MVNOの格安SIMを使っている人もTrip SIMはいい選択肢になるでしょう。
⑤まとめ。期間が決まっているなら使いやすい
Trip SIMは「毎日プラン」のある国ならば無駄のないプランを買うことができます。なおデータの追加は出来ませんが、現地滞在が万が一伸びても新たに1日、2日など必要な日数分だけのプランを購入することもできます。日本の会社のサービスという点も安心感があるでしょう。海外旅行や出張時、自分の渡航日数にマッチするeSIMがなかなか見つからないときは、Trip SIMを検討するのもいいかもしれません。
香港在住の携帯電話研究家。海外(特に中国)のスマートフォンや通信事情に精通。IoT、スマートシティー、MaaS、インダストリアルデザインなど活動の幅は広い。最新機種のみならずジャンク品から百万円のラグジュアリーモデルまであらゆる携帯電話・スマートフォンを購入する収集家でもあり、その数はまもなく1800台に達する。