世界初、Z型の3つ折りスマホ「Mate XT Ultimate Design」をチェック
ファーウェイが2024年9月に発売した「Mate XT Ultimate Design」(以下「Mate XT」と略称)はディスプレイの2か所を折り曲げることのできる、世界初の「3つ折りスマホ」です。現時点では中国のみの販売ですが、2025年には海外展開も予定されています。eSIMの対応は未定ですが、海外で登場すれば大きな話題になるでしょう。日本市場からはファーウェイのスマートフォンは撤退してしまっていますが、話題性のあるこのMate XTを投入する、というのもありうるかもしれません。今回、中国で販売されている実機を触ったのでどのような製品化を見ていきます。
目次
折りたたむと普通のスマホサイズが使いやすい
Mate XTを折りたたんだ状態を正面から見ると、普通のスマートフォンと何ら変わらない大きさです。縦横のサイズは156.7 x 73.5mm、画面サイズは6.4インチで2232 x 1008ピクセル、アスペクト比は19.9:9となります。一般的なスマートフォンは19:9から19.5:9程度なので、違和感なく使うことができます。
見た目は普通のスマートフォン
ただし横から見るとだいぶ厚いことがわかります。厚みは12.8mmで、最近のスマートフォンでもここまで厚いモデルは無いでしょう。また重量も298gとかなり重くなっています。とはいえ底面から見ると、3枚のディスプレイがZ型に重なるように折り曲げられていることがわかります。ただものではないということがこれを見てもわかるはずです。
3枚のディスプレイが重なっている
ディスプレイをZ字に折り曲げるこうぞうのため、ヒンジは2つあります。1つ目のヒンジはディスプレイを「山」の形に、もう1つのヒンジは「谷」の形に曲げます。そのため折りたたんだ状態では、側面側を見ると、右側にはその山の部分が見えるため、曲がったディスプレイがむき出し状態になっています。なお専用カバーが製品には付属しており、背面とこの右側面をカバーする構造になっています。一方左側面はディスプレイが内側に隠れるのでむき出しではありません。
右側面には折り曲がったディスプレイのヒンジ部分が見える
背面は合皮、いわゆるヴィーガンレザー仕上げで高級感があります。カメラも5000万画素の広角、1200万画素の5.5倍望遠、1200万画素の超広角と十分なスペックです。なお広角カメラはデジタルカメラのレンズ同様、絞り羽根を動かすことのできる構造で、f/1.4からf/4.0の間で調整ができます。カメラ性能は他社のフラッグシップクラスのモデルに匹敵します。
高級感ある背面仕上げに高性能カメラを搭載
開けば10.2インチのタブレット、他社の折りたたみより便利
厚みのある本体を開いていくと、3枚のディスプレイが1枚に伸びるように可変します。ヒンジの動きはしっかりしており、自由な角度で止めておくこともできます。情報から見ると左側のヒンジはディスプレイが山形に、右側のヒンジはディスプレイが谷型に曲がっていることがわかるでしょう。ちなみに一般的な2つ折りのスマートフォンは谷型に折る構造ですが、ファーウェイは山型、谷型、どちらのモデルも製品化してきています。Mate XTは2つ折り山型、2つ折り谷型、その2つのモデルを合体させた製品でもあるのです。
ヒンジは自由な位置で止めることができる
このように1枚だけを開けば、一般的な2つ折りスマートフォンと同じサイズで使うこともできます。この時の画面サイズは7.9インチ、2232 x 2048ピクセル。よくみる折りたたみスマートフォンと変わらない感覚で使えます。
1枚だけ開いた状態でも使える
そして完全に開けば10.2インチ、3184 x 2048ピクセルのディスプレイがあらわれます。この形状は一般的なタブレットと同じであり、動画を大画面で見たり、スプレッドシートやプレゼン資料を開いたりなど、スマートフォンでは得られないユーザー体験を実現できます。しかも移動するときは折りたためばスマートフォンサイズになります。「タブレットを買えばいい」という声も聞かれますが、手ぶらで出かけるときにこのサイズのタブレットを持ち歩こうと思う人はいないでしょう。Mate XTならスマートフォンを持ち歩きながら、必要な時に大画面タブレットとして使うことができるわけです。
完全に開けばタブレットになる
Mate XTのもう1つの特徴は本体の薄さです。3つ折り時はかなりの厚さでしたが、完全に開けば3.6mmと極薄になります。ここまで薄いタブレットやスマートフォンは他には無いでしょう。ファーウェイの技術力の高さを実感することもできます。
3.6mmと極薄だ
大画面&自在に折り曲げることのできる可能性
3つ折り型の最大の特徴は大画面を使えることだけではなく、アプリの分割表示も楽に行えることです。たとえばブラウザを開きながら他のアプリを開いても、ブラウザの表示が窮屈になることはありません。一般的な2つ折りスマートフォンでは2つのアプリを表示できても、横幅が狭いためあまり見やすいものではありません。Mate XTなら「2つ折りスマホ+普通のスマホ」という表示も楽にできるのです。
2つのアプリ表示も楽に行える
本体を縦向きに使うこともできます。このあたりは一般的なタブレットと変わりません。ちょっと混んでいる電車の中などではこの向きにして使うのが邪魔にならないかも。そしてもっと混雑して来たら折りたたんでスマートフォンサイズにすればいいのです。一般的なタブレットではこの「折りたたんで小さくする」ことはできません。
縦向きでも使える
そして画面の1枚だけを折りたためばスタンドにすることも可能。これも2つ折りスマートフォンでもできることですが、Mate XTなら大きな画面を表示することができます。動画を見るのに最適であり、また机の上に置いてメモや忘備録を貼っておくなど、オフィス用途にも使えるでしょう。折りたためる画面を表示だけに使うのではなくスタンドにできるのも3つ折りスマートフォンの大きなメリットです。
スタンドモードなら動画も見やすい
グーグルサービス非対応がネック
3つ折りスマートフォンはファーウェイの他、新興国にスマートフォンを展開しているTECNOも試作機を開発中です。またサムスンディスプレイも3つ折りディスプレイを海外のイベントで展示しています。2025年は3つ折りスマートフォンがさらに増えるかもしれません。
Mate XTは世界初の先駆者モデルとして、ライバルが登場しても話題の中心にいるでしょう。とはいえファーウェイのスマートフォンには大きなウィークポイントがあります。それはグーグルサービスに対応していないのです。現在のファーウェイのスマートフォンが採用している「HarmonyOS」は裏技を使えばAndroidのアプリを入れることが可能であり、グーグルサービスも限定ながら使うことができます。
しかしHarmonyOSの最新バージョンである「HarmonyOS Next」では、Androidとの互換性が無くなります。そのため裏技でアプリを入れていたユーザーも今後は入れることができなくなります。HarmonyOS Next対応アプリは今後増えるとはいえ、たとえばLINE、Instagram、Facebook、XといったメジャーなSNSアプリは現在のHarmonyOSでも利用できません。HarmonyOS Nextでどの程度世界のユーザーをカバーするつもりなのか、ファーウェイの動きが気になるところです。
香港在住の携帯電話研究家。海外(特に中国)のスマートフォンや通信事情に精通。IoT、スマートシティー、MaaS、インダストリアルデザインなど活動の幅は広い。最新機種のみならずジャンク品から百万円のラグジュアリーモデルまであらゆる携帯電話・スマートフォンを購入する収集家でもあり、その数はまもなく1800台に達する。