eSIMって何? どんなメリットがあるの?
スマホを使う際は、通信キャリアと回線契約をして、通信キャリアが発行するSIMカードをスマホに装着することではじめて通信が可能になります。SIMには電話番号などの契約者情報が記録されています。たとえば機種変更をする際には、新しく購入したスマホにSIMカードを差し替えることで、新たな端末で同じ電話番号で通信が可能になります。
しかし、最近は機種変更などの際にいちいち差換えをする必要がない「eSIM」というものが登場し、広く利用されるようになってきました。今回は改めて、eSIMとは何か、eSIMのメリットやデメリットなどを解説しましょう。
目次
●eSIMとは?
これまでSIMカードにも複数の規格があったのですが、eSIMは新たなSIMの規格として生まれたもので、ICカードそのもの無くしてスマホ等の端末内部にあるチップ(モジュール)に電子的にSIMの情報を追加(書き込み)できるようにしたものです。いわば、埋め込み型のSIMというようなイメージです。
これまでスマホを利用する際には、通信キャリアと回線契約を結ぶ際には店頭でSIMカードを受け取るか、オンラインで手続きする際にはSIMカードが郵送されてくるのを待つ必要がありました。
しかしeSIMであればわざわざ店頭まで足を運ぶ必要もなく、オンラインで申し込めばすぐにeSIMをダウンロードして即日利用することが可能になります。
●eSIMを利用するメリット
前述したとおり、eSIMの最も大きなメリットが、契約から開通までの手続きがオンラインで簡単にできる点です。eSIM対応のスマホが必要となりますが、現在市販されている多くのスマホがeSIMに対応しています。
回線契約を結ぶ際には、通信キャリアのオンライン販売サイトから簡単に契約手続きでき、開通までの手続きをウェブで完結させることが可能です。
契約手続きが完了すれば、すぐに通信サービスを利用できます。開通手続きがスムーズということは、データ通信プランを急に追加したいとか、海外旅行先で滞在国の通信サービスを利用したいといった急に通信が必要になった場合にも有効です。
また、最近では1台の端末で2回線の同時待ち受けができる「デュアルSIM」端末が増えています。たとえば1台のスマホに仕事用とプライベート用の電話番号を入れて使い分けたいといったニーズもあるでしょう。
あるいは1つの回線契約は通話用とし、もう1つの回線契約はメインの回線よりもお得なデータ通信料金で利用できるMVNO(格安通信キャリア)で契約して1台のスマホで使うといったことも可能です。こうした通信契約の追加がeSIMであればオンラインで簡単に済ませることが可能になるのです。
●eSIMのデメリット
別の機種を使う際に、物理的なSIMカードは抜き差しをするだけで済みますが、eSIMの場合はその都度オンラインでeSIMの再発行手続きが必要になります。通信キャリアによっては、eSIMの再発行に手数料が必要となる場合もあります。
また、スマホ自体がeSIMに対応していなければeSIMが使えません。現在市販されているスマホの多くはeSIMに対応していますが、旧機種などでは対応している機種が限られます。
また、スマホ単体でeSIMの初期設定を行う場合にはインターネットへの接続環境が必須となります。すなわち、Wi-Fiなどの通信環境がなければスマホ単体でのeSIMの初期設定ができません。
●eSIM利用可能なスマホ
eSIMが利用可能な主要な端末は以下のとおりです。
〇iPhone・iPad
iPhone XS以降のモデル、iPad ProおよびiPad Airは第3世代以降のモデルがeSIMに対応しています。日本の主要なキャリア(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイル)はeSIMに対応しているため、これらの通信キャリアの契約を物理SIMとeSIMとで2回線を同時に1端末で利用することができます。
なお、eSIMのプロファイルは複数登録可能ですが、アクティブにできるのは1回線のみです。また契約した通信キャリア以外のSIMを利用する場合は端末のSIMロックが解除されている必要があります。
〇Androidスマホ
Google Pixelであれば3以降のモデル、Samsung GalaxyであればS20以降の一部モデルなどが対応しています。それ以外のメーカーの端末でも、比較的最近のモデルでは大半がeSIMに対応しています。
〇その他
ws PCや、ウェアラブルデバイスなどでもeSIM対応モデルが増えてきています。
●eSIMを使う手順
一般的な利用手順は以下のとおりです。
- 1.eSIMのプランを選ぶ
主要な通信キャリアはeSIMプランを提供していますので、公式サイトや店舗でプランを選びましょう。プランにはデータ通信量や通話料金などが含まれているので、自分の使用ニーズに合ったものを選びます。
主要なMVNOもeSIMに対応してきました。副回線用にMVNOを契約し、既存回線に追加して利用するといった使い方も便利です。 - 2.eSIMプロファイルを取得する
eSIM対応のプランを契約すると、通信キャリアからeSIMを設定するための情報(QRコードなど)がメール等で送られてきます。
手順に従ってeSIMプロファイルのダウンロードとeSIMの有効化を行います。以下の手順のとおり進めていきます。 - 3.設定アプリを開く
端末の設定アプリを開き、通信設定やモバイルデータの設定項目を探しましょう。
一般的には「設定」→「ネットワークとインターネット」→「モバイルネットワーク」のような項目にあります。 - 4.eSIMを追加する
設定項目内で、「eSIMを追加する」または「データプランを追加する」といった選択肢がある場合、それを選びます。
その後、カメラアプリが起動し、eSIM設定のためのQRコードをスキャンするように指示されることがあります。 - 5.eSIM QRコードをスキャンする
スキャンモードになったら、eSIM設定のためのQRコードをデバイスのカメラで読み取ります。
デバイスがQRコードを認識すると、eSIMが有効化され、新たな通信プランが適用されます。 - 6.設定の確認
eSIMの設定が完了したら、設定アプリ内でeSIMが正しく表示されていることを確認しましょう。
また、電波状況や通信速度も確認してください。
以上が、一般的なeSIMの設定の手順です。端末やキャリアの仕様によって手順が異なる場合がありますので、端末の取扱説明書や契約する通信キャリアのサポート情報を参考にすることをおすすめします。
●まとめ
アメリカではiPhone 14以降の端末はeSIM専用モデルになっているなど、世界ではeSIMを主流にしていく流れになっています。ぜひみなさんもeSIMのメリット、デメリットを理解した上で、スマホの様々な利用シーンでeSIMの有効活用を検討してみてください。
名桜大学人間健康学部健康情報学科教授。’90年代から携帯電話端末のレビューやサービスの解説を行ってきた。携帯電話情報サイトの編集長などを務めた後、2009年に大学教員に転身。以後スマートフォンの社会での活用などを研究テーマとして活躍。現在は医療・ヘルスケア分野へのデジタルデバイスの応用を中心に研究に従事。携帯電話コレクターとしても知られる。