eSIMの普及はこれから急増していく?!
香港の調査会社Counterpoint Reserachは6月に、2022年度のeSIM対応デバイス出荷量と市場予測を発表しました。このレポートによると、今後5年間で、ハードウェアベースのeSIM、SIM機能をモジュールチップに直接組み込んだiSIM 、nuSIM、Soft SIMを含むすべてのフォームファクタをカバーするxSIM対応デバイスが累計で60億台以上出荷されると見込んでいます。
目次
①スマホ需要低迷にも関わらずeSIM対応端末は増加
eSIMの採用は変曲点を超え、スマートフォンのほか、コネクテッドビークル、セルラー通信機能を搭載したIoTアプリケーションなどでのeSIMの採用増加に牽引されて、急速な成長期に入りつつあります。次の成長段階は、通信事業者 (MNO) とデバイスメーカーの間でeSIMに対する認識が高まることによってさらに普及が後押しされていくとしています。
2022年には、セルラー接続デバイス全体の出荷がスマートフォン需要の低迷を受けて前年比3%減少したにもかかわらず、eSIM対応デバイスの出荷台数は前年比11%増の4億2,400万台に達しました。世界中で275を超えるMNOがeSIMをサポートし、平均して30以上のeSIM対応デバイスを消費者向けに提供しています。さらに、セルラー通信機能を備えたIoTモジュールやデバイスの数は増え続けています。
同社の研究担当副社長のニール・シャー氏は今後の出荷の見通しについて、「通信モジュールにeSIMを統合した「iSIM」がSIMの主流のフォームファクターとなる」と述べていて、2028年以降、iSIM が主要なSIMフォームファクターとなり、iSIM対応デバイスの出荷数は2030年までに累計40億台に達すると予測しています。
②eSIMが使えるデバイスカテゴリはますます拡がる
また、eSIMが今後さらに様々なデバイスカテゴリに拡がっていくとされ、スマートウォッチをはじめ、ノートPCやタブレットなどのセルラー対応デバイスでも、今後数年間で急速にeSIM対応が進んでいくとしています。
そのほかにも、xRデバイスやドローンなどのデバイスカテゴリが今後急速に成長するカテゴリとなるでしょう。5G接続のドローンは、eSIMテクノロジーの恩恵を受ける重要なデバイスであり、ラストマイルのドローン配送、災害管理、捜索救助、教育、建設、農業などのユースケースで導入が進んでいくとみられています。
また、自動車をはじめスマートモビリティもeSIM普及の成長分野となるでしょう。コネクテッドカー(通信機能を備えた自動車)はeSIMの最大かつ最も明白な使用例の1つといえます。
③おわりに
昨秋発売されたiPhone14ですが、じつは北米で販売されるiPhone14については物理SIMが廃止され、eSIMのみとなったそうです。これがeSIMの認知の高まりの大きな転換点になったのだとか。今後はeSIMが当たり前のものになっていきそうですね。
- Counterpoint Reserachプレスリリース:
eSIM-Capable Devices Set for Hyper-Growth After Crossing Inflection Point
名桜大学人間健康学部健康情報学科教授。’90年代から携帯電話端末のレビューやサービスの解説を行ってきた。携帯電話情報サイトの編集長などを務めた後、2009年に大学教員に転身。以後スマートフォンの社会での活用などを研究テーマとして活躍。現在は医療・ヘルスケア分野へのデジタルデバイスの応用を中心に研究に従事。携帯電話コレクターとしても知られる。