画面が伸びたり曲がったり、ビデオの生成AIもできるスマホ最新技術をMWCで見た
2024年2月末にスペイン・バルセロナで開催されたMWC Barcelona 2024ではスマートフォンメーカー各社が新製品を発表しただけではなく、次世代技術を搭載したコンセプトモデルなども多数展示されました。
もちろんeSIMはスマートフォンの使い方を変える1つの新技術でしょう。今回はMWCで見た新しい技術を紹介します。
目次
①ローラブルスマホの登場は近い
TECNOが展示した「PHANTOM Ultimate」はディスプレイが巻き取り式のローラブルディスプレイを使ったスマートフォン。コンセプトモデルですが、実際に動作する実機が展示されていました。
本体を閉じた状態では6.55インチのディスプレイのスマートフォンとして使えます。正面から見ると左側の側面もディスプレイになっていることがわかりますが、内側に軸があり、ここを介してディスプレイが裏面から表面へとスライドして出てくる機構になっているのです。
本体右上のボタンを押すか、画面上で横に指三本でスワイプすると、ディスプレイが動きます。1秒ちょっとでディスプレイが伸び、7.11型へと大型化します。
本体の厚みは一般的なスマートフォンより若干あるものの、常用できるレベルです。ディスプレイの巻き取りもスムーズでした。
ただしこの部分からゴミや異物が入る恐れがあるため、製品化するには何らかの対策が必要でしょう。とはいえ展示会の会期中は連日多くの人がこのデモ機を触っていたものの破損してしまうこともなく、十分な耐久性があることがわかります。
折りたたみスマートフォンの次世代モデルとして、数年内に製品化される可能性を感じることのできる製品でした。
②ビデオにも対応、リアルタイムな生成AIがスマホで可能に
スマートフォンのチップセットを開発しているメディアテックは最新モデル「Dimensity 9300」を展示し、その昨日の一部をデモしました。スマートフォンのチップセットと言えばクアルコムも有名で、同社のハイエンドチップセット「Snapdragon 8 Gen 3」は多くのメーカーのフラッグシップモデルに搭載されています。
たとえばサムスンの「Galaxy S24」シリーズが搭載しています。Dimensity 9300はSnapdragon 8 Gen 3に匹敵するスペックを誇りますが、中でもAI処理にも優れた性能を発揮します。
Snapdragon 8 Gen 3は生成AI機能を使い、画像を予測してゼロから作り上げることができます。たとえば背景の不足している部分を自動で作成することもできるのです。
Dimensity 9300のデモでは同様の画像生成のほかに、ビデオのリアルタイム生成AI機能が行われました。写真で見るように被写体の女性が赤い丸い板を持ってスマートフォンの前に立ち、動きます。スマートフォンの画面内では、下側にオリジナルの映像、上側には生成AIによる映像が表示されます。
この写真でわかるように「中世の鎧を来た風の動画」と指示すれば、動く被写体をリアルタイムに書き換えて表示できるのです。
③モジュラー式の5Gタブレットは固定電話にも決済端末にもなる
日本でもスマートフォンなどを展開しているOrbicは、固定電話にもなる5G対応のタブレット「OFFICE 5G」を出展しました。
電話回線も接続可能、LAN端子もあります。固定電話機としても使え、さらに5G回線を使えば携帯回線での通話も可能。
eSIM対応なので気軽に回線の追加も可能です。オフィス用途を考えているためビデオ会議をしながら、そのウィンドウを小型化してAndroidアプリを動かすこともできます。さらに受話器もあるのでしっかりとした通話も可能です。
受話器の部分は取り外しが可能で、ここにPOSモジュールを取り付けると商店などでの支払い端末として使うこともできます。いずれは他のモジュールも装着できるモデルが出てくれば、監視用など様々な用途に使うこともできるでしょう。
④巻き取りディスプレイのスマホも開発中
折りたたみスマートフォンの次の世代のモデルとして、冒頭に紹介したローラブルディスプレイ搭載モデルだけではなく、ディスプレイを丸めることのできる「ベンダブル」ディスプレイのスマートフォンも開発が進んでいます。モトローラは「adaptive display」を搭載したコンセプトモデルを紹介。実際に腕に巻き付けて使うこともできました。
このベンダブルディスプレイは、ディスプレイメーカーも開発を進めています。サムスングループのサムスンディスプレイの「OLED Cling Band」も同様の曲げることのできるディスプレイです。
こちらはモトローラのように実際に表示できるものを腕に巻き付けるデモは無く、巻きつけデモはディスプレイの写らないモックアップのみでした。とはいえディスプレイが商用化できるレベルに達すれば、すぐにスマートフォンとして世の中に出せるのがサムスンディスプレイの強み。
2社が展示を行ったベンダブルディスプレイ、製品化は近いのかもしれません。
⑤登場は来年?前にも後ろにも曲がるスマホ
こちらもサムスンディスプレイの展示から。折りたたみスマートフォンは市場に出てまだ数年しかたっておらず、まだまだ改良が進められています。
その中でもまもなく登場することが期待されているのが前側にも後ろ側にも折り曲げることのできる「360度折り曲げディスプレイ」を搭載したsmartフォンです。サムスンディスプレイに展示してあった試作品は、実際に前後に曲げることが可能でした。
「Flex In & Out」とよぶこの機構のディスプレイなら、本体を閉じてもそのままメインディスプレイを片側だけ使うことができますし、逆側に閉じればディスプレイを保護することができます。現在市販の折りたたみスマートフォンのほとんどは、閉じたとき使うためにもう1枚のディスプレイを外側に搭載しなくてはならず、コストがかかる上に厚みも増します。
Flex In & Outならその問題も解決できるわけです。
なお画面を保護するように折りたたむと、通知や着信があるたびにスマートフォンをいちいち開かなくてはなりません。そんな面倒を避けるために、サムスンディスプレイは「Flex Liple」という構造も開発中です。
これはディスプレイの端をエッジの部分まで伸ばした構造で、本体を閉じても1行の表示で通知などを見ることができます。恐らくFlex In & OutとFlex Lipleはセットで商用化されるのではないでしょうか。
⑥未来が現実になったAIデバイス「Ai Pin」
Humaneの「Ai PIN」という製品を見ることもできました。すでに一部で報道されているように、胸につけるピンバッジのような形の小型デバイスで、音声や指先で操作できるAIアシスタントです。
サイズは本当に小さく、この大きさながらマイクを使った音声入力が可能、カメラを内蔵しており指先の動きを認知、さらに小型のモノクロプロジェクターも内蔵しています。ポスト・スマートフォンとして最も期待できる製品でもあります。
スマートフォンを使ったAIアシスタントと同じようなことが出来てしまいます。実際に。「明日の天気は?」と話しかければ「晴れ、時々曇りです」と音声で返してくれました。
展示会場のやや騒がしい場所でもユーザーの声をしっかり認識し、スピーカーからの音も十分大きく聞こえたのは驚きです。またプロジェクターはAi Pinのディスプレイ代わりに使え、細かい文字でもこれくらいの解像度なので読むことができるでしょう。
時刻や天気の表示もできるし、操作パネルを投影することもできます。つまり指先でタッチ操作のようなことができるわけです。
なお指先をつまむなどの操作をすれば、Ai Pinのカメラがそれを認識してやはり本体の様々な動作をコントロールできます。
モノクロながら写真や動画も表示できるのはお遊びながら楽しめると思いました。数年もすれば16色くらいの表示に対応しそうだし、将来はフルカラーで投影できるようになるでしょう。
近未来の製品を実際に体験できたのでした。
香港在住の携帯電話研究家。海外(特に中国)のスマートフォンや通信事情に精通。IoT、スマートシティー、MaaS、インダストリアルデザインなど活動の幅は広い。最新機種のみならずジャンク品から百万円のラグジュアリーモデルまであらゆる携帯電話・スマートフォンを購入する収集家でもあり、その数はまもなく1800台に達する。